>>133
どあほう。
以下は黎明篇より。
【取り残された農民や鉱夫たちの群に、同盟軍の宣撫士官はそう語りかけた。
「吾々は君たちに自由と平等を約束する。もう専制主義の圧政に苦しむことはないのだ。あらゆる政治上の権利が君たちには与えられ、自由な市民としての新たな生活がはじまるだろう」
 彼らが落胆したことに、彼らを迎えたのは熱烈な歓呼の叫びではなかった。おもしろくもなさそうに宣撫士官の情熱的な能弁を聞き流すと、農民の代表は言ったのだ。
「政治的な権利とやらよりも先に、生きる権利を与えてほしいもんだね。食糧がないんだ。赤ん坊のミルクもない。軍隊がみんな持って行ってしまった。自由や平等より先に、パンやミルクを約束してくれんかね」
「もちろんだとも」
 理想のかけらもない散文的な要求に、内心、失望しつつも、宣撫士官たちはそう答えた。なにしろ彼らは解放軍なのだ。帝政の重い桎梏《しっこく》にあえぐ哀れな民衆に、生活の保障を与えるのは、戦闘と同等以上に重要な責務である。
 彼らは各艦隊の補給部から食糧を供出するとともに、イゼルローンの総司令部に次のようなものを要求した――五〇〇〇万人の一八〇日分の食糧、二〇〇種に上る食用植物の種子、人造蛋白製造プラント四〇、水耕プラント六〇、およびそれらを輸送する船舶。
「解放地区の住民を飢餓状態から恒久的に救うには、最底限、これだけのものが必要である。解放地区の拡大にともない、この数値は順次、大きなものとなるであろう】