さすがに集中力が切れた。
或人からプレゼントされた掛け時計を確認すると、書き始めてからおよそ4時間は経っている。すでに深夜と呼ばれる時間だ。飛羽真はインクの蓋を閉めると、凝り固まった身体をほぐすために立ち上がった。
――エコノミークラス症候群にならないために、軽いストレッチと水分補給。必ずやってね。
医者であり兄である永夢の言葉を思い出す。飛羽真は踵を返しペットボトルに手を伸ばしたが、肝心の中身は空になっていた。そういえば原稿3枚半前に同じような行動を取って空にしたような気が。
それならと飛羽真は自室を出て、ストレッチも兼ねてお茶を飲むために1階へと下りて行った。
……下りた時点で誰かいるとは思っていたが、リビングの扉を開けると、そこには扇風機の前に陣取って風を浴びている永夢。
「あっ、シ――。(今、進ノ介兄さん寝てるから)」
それから小声付きで指差されたソファを見ると、仰向けに沈んだまま安らかな顔でピクリとも動かない進ノ介がいた。
「(わぁまるで泥土だ……今帰りか?)」
「(時間的にはそうなるけど、雪崩れて寝たわけじゃないよ。2人ともお風呂には入ってるから)」
永夢が自身の黒髪を撫でるように梳いた。風に当たっている短髪は、観察してみると確かにしっとり濡れている。
なるほど、よく見なくても2人はすでにラフな恰好をしていた。士ほどではないが大体わかった。あとは寝るだけというタイミングで、進ノ介の方は先に力尽きたらしい。
「(進ノ介兄さん……僕がお風呂に入る前は起きてたんだけどね)」
永夢が帰宅したとき、当の進ノ介は風呂上がりのさっぱりした状態で出迎えた。「おかえり。湯、気持ちよかったからお前も早く入れよ」と言われ、入れ替わるように済ませたのが今から16分前。
……湯舟に浸かりながらゲームは出来るタイプだが、永夢は基本的に烏の行水である。
たった16分。否、進ノ介が用事を済ます時間を考慮して10分ほどの間に、こんな場所で夢の中に旅立っているとは想像すらしていなかった。驚きすぎて最初3度見しちゃったよとは永夢の談話だ。
歴代ライダー主人公が兄弟だったら 45
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487今日はよく眠れる日 1/5 (ワッチョイ 4fe5-IMqh [180.45.23.196])
2020/09/26(土) 00:46:49.07ID:p9nqwekv0■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています