俯いた蓮を見遣って、薫が語り出す。
 「…優しさを捨てず、皆の笑顔を護る為に闘い、世界を救った男を俺は知っている」
 蓮が顔を上げた。
 「非情にならなくとも、戦いに勝つことはできる。…甘いかもしれない、綺麗事かもしれない。
  だが…非情にならなかったから、優しさを捨てなかったからこそ、その男は闘えたのだと俺は思う」
 そこで薫は、蓮にあたたかな眼差しを向けた。
 「(おまえは‘あの’とき非情になることを望んでいると言っていたが、おまえは優しさを捨てずにいた。そして、おまえの願いは叶った…
  俺は、おまえが優しさを切り捨てなかったから願いを叶えられたような気がするんだ)
  だから蓮、もう責めるな――優しさを捨て切れない大二を…それから…‘あの’ころのおまえ自身を…」
 「 !!」
 薫の言説に蓮は目を見開く。

 そこで兄弟一同は、蓮のまとうオーラがやわらかくなるのを感じた。

 張り詰めた空気がほどけていく。

 「大二は正義感が暴走しているようだが…、あいつなら――全力で振り切ってくれるだろう」
 ここまで静観していた竜の言葉が心強い。
 「今度 大ちゃんが帰ってきたら、肩の力を抜けってお説教だな」
 頭の後ろに手を遣りながら明が結論付け。
 それに対し、飛彩が
 「あぁ。だが、まずは…怪我の治療だ」
 こう返したところで、
 兄弟達は各々いまここにいない大切な兄弟――大二に想いを馳せるのだった。


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以上です
大二、真面目なのも真っ直ぐなのもいいけれど、最近あまりに向こう見ずでハラハラする
大二が乗り越えてくれることを信じて…
乱文失礼しましたー