『復活のコアメダル』を鑑賞して一番に頭に浮かんだのは、この『鋼の錬金術師』であった。アンクが10年前に、そして今回は映司が、犠牲をもって魂のラリーを行う。これだけが唯一、あの見事な本編最終回へ「付け足すことが許される」お話。そのような思惑があったのではなかろうか。



とはいえ。あの本編最終回は、TVシリーズ1年分の結末として組み上がったものである。グリードが復活し、メダル争奪戦が行われ、バースも参戦し、完全復活や紫のコアメダルという要素を経て、やっとこさ辿りついたクライマックス。舞台装置と危機的状況が積みに積みに積み上がった最後に、あの展開がある。



『復活のコアメダル』は、どうしても本編最終回をリプライズしたい。しかし、1年分のTVシリーズは、当然ように描けない。これはVシネマ枠、与えられた条件は正味60分。だからこそ、すでに本編に撒かれていた設定を叩き起こし、疑似的に「TVシリーズ1年分」を蓄積する他ない。



そうして、特に深く描かれることなく古代オーズが復活する。鴻上会長は性懲りもなく人災として人造コアメダルを用意する。グリードらも復活して対人間との総力戦が始まる。世界は逃れようもなく破滅に向かっていく。本編最終回がそうであったように、ギリギリの決断をしなければならない舞台装置を用意する。「TVシリーズ1年分」の蓄積を、設定とあらすじでまかない、そうした上で本編最終回を再演する。



映司という人間の欲望を描いた末に、あの本編最終回があった。であれば、ゴーダという新しいグリードを登場させ、「全てを救いたい」映司の欲望を「全てを我が手にしたい」野望に読み替え、敵に位置付ける。少女を救えなかった映司のトラウマも重要なトピックなので、先の「喪失」に絡めて描き直す必要があるだろう。47話分の蓄積を背負う形で、しかし当然のように尺や扱いに無理が出でもそれでも、古代オーズやグリードを処理していく。選択肢を殺し、外堀を埋め、「本編最終回と同じ決断」しか残されていない局面まで、力業で持っていく。