(続き)
>■譲らなかった構成変更
>「忘れることはすぐに忘れますし、ずっと心に留まっているものは、心に留まっています」
>そんな宮原の言葉を聞き、私は「心に留まっているもの」の具体例を尋ねてみた。
>「先生からこういう風に言われたから、練習ではこれに気をつけよう、とか、
>そういう『心に留めておかないといけないな』って自分が強く思ったものは、よく思い続けています」
>その一例が故障前、昨季のショートプログラム(SP)で取り組んだオペラ「ラ・ボエーム」のワルツだった。
>振り付け時にルッツ−トーループの連続3回転ジャンプを、基礎点が1・1倍となる演技後半に入れることを決めていた。
>だが、シーズン序盤は、そこでの失敗が演技全体の足を引っ張ることが多かった。
>「もう変えたら?(演技の)前半にしよう?」
>小学校低学年の頃から指導を受ける浜田美栄コーチには練習中、厳しい声で何度もそう諭された。
>だが、宮原にも信念があった。
>「最初にプログラムを作ったときに『この構成で』って決めたのは変えたくなくて、そこはこだわりたかったんです。
>『試合で絶対に決めたい』と思って、そこは譲らなかったですね」
>照れ笑いを浮かべながら、その時の様子を詳しく教えてくれた。
>「言葉では先生に言わなかったんですが、練習する中で『(前半に)変えたら?』みたいな感じになっても、態度で示すっていうか…。
>言葉ではなかなか言えなかったんですけれど、ひたすらそこを練習して『試合でできるようにしたい!』っていうのをアピールしていました」
>その「こだわり」こそが、宮原が世界トップクラスに上り詰めた一因と想像した。
>一方で、スケート靴を脱いだ日常は、それと正反対というから興味深い。