>>519
当社は、昨期、新商品を開発し多額の宣伝費をかけて販売を開始したため、1億円の赤字になりました。
当期以降にその新商品が大ヒットし、1億の先行投資など2、3年で回収できるはずで、計画通りの赤字です。

ところで、法人税は利益に対して約30%が課税されますが、赤字になった期の後に、その赤字を取り戻す
形で利益が上がった場合には、元の赤字を超えるまでの利益に対しては課税されないことになっています。

つまり、当期と翌期に5千万円ずつの利益が出た場合、本来なら1500万円ずつ払うことになる法人税を
払わなくてもよいのです。
ということは、前期に生じた1億円の赤字は当期以降の3千万円の税金の減額をもたらすものであり、
前期の損失は実質的には7千万だったと言うこともできます。逆に、法人税ゼロで5千万円の税引後利益
を計上することになる当期と翌期ですが、本来払うべき1500万円の税金を払わなくてよい理由は、
各期の業績とは何の関係もなく、その期の社長の成績は5千万でなく3500万で評価されるべきです。

そこで、前期の税引前損失1億円から、繰延税金資産3千万円を計上して、前期の純損失を7千万
としました。計画通りなら、当期と翌期は税引前利益5千万円から1500万円の繰延税金資産を
減少させて3500万円の純利益が計上されることになります。

駄菓子菓子、あなた方営業部の怠慢のため当期の業績は惨憺たる有様で、よくてトントンといった
ところです。それでも社長と営業部の皆様は、翌期以降数年で前期の1億円の赤字は取り戻せると
おっしゃいますが、具体的な改善策は何もなく、経理部としては、当期以降の当社が利益を出すことは
永遠にないという判断に至りました。

さて、当期以降に利益が出ることを前提に計上していた3千万円の繰延税金資産でございますが、
利益が出ないのであれば、もともと法人税はゼロなので、当期以降に減る税金はないことになります。
そうであれば、もはやこの3千万円は資産ということはできませんので、当期の決算時に全て
取り崩すことにいたします。

当期の税引前利益がゼロの場合、当期は3千万円の純損失ということになり、これは翌期以降の
あなた方営業部員のボーナスの減額という形で埋合わされるべきであります。