そもそも種村直樹がライターを続けてきた動機はなんなんだろうか。作家生活を通して何を語りたかったのだろうか。
彼の言動から、辛口で事情通の鉄道評論家として見てしまいがちだ。なんせ、あの毎日新聞の元記者なんだし。

 ところが、彼が書いている文章をよくよく読んでいると、ふと気付かされる。実は、彼の文章には、主義主張も、立場も政治思想も何もかも存在していないということを。

 29年間書き続けてきた「外周の旅」の中身がないということを婉曲的に語ってきたが、それは彼が30年以上続けてきた「鉄道ジャーナル」の「レイルウェイレビュー」を読めば分かる。