>>235

どちらも法的に成立しない。

まず、損害賠償責任については、債務不履行または不法行為と損害の間に、相当因果関係が必要になる。
債務不履行の有無について検討すると、映画については、既に撮影を完了しており、
ピエール瀧は、映画において主要な債務である実演(演技)を履行している。
付随的に、
「映画公開に法的障害となる行為を行わない債務(不作為債務)」
が存在するかが問題になるが、積極的に公開を妨害する行為が存在したわけではなく、法的障害にはならない。
(だからこそ、公開の「自粛」、すなわち「自主的」な中止と位置付けられるわけだ)
換言すると、行為(犯罪)と損害の間の相当因果関係がない。
以上のことは、不法行為責任についても妥当する。

次に、使用者責任については、根本的に内容を誤解している。
民法715条の使用者責任とは、雇用契約等の使用関係が存在する場合において、
被用者が、職務中に、「他者」に対して損害を与えた場合に、使用者も連帯責任を負う、というもの。
(言及した暴力団の例も、子分が発砲等で市民に損害を与えた場合に、親分も責任を負う、というもの)
今般の映画の例では、仮に使用関係が存在するとしても、
損害を負うのは「他者」ではなく使用者である映画会社のため、使用者責任という概念は関係ない。