>>429
 「小さい頃から口答えが多いと思っていた。体操服は下の妹や弟に順番にお下がりとして着せていた。男女兼用で着せており破れた体操服を縫って着てもらっていた。
裕福ではなく夫も会社を休みがちだった。子どもが多い家はこういうことをどこでもやっている。
高校時代、私との関係は冷え切っていた。妹をいじめたり言うことを聞かないので、ビンタなどたたくしつけは、ほかの姉弟よりも多かった。
わが家のルールとして自分で食器を洗うというものがあったが、しばらくしてやらなくなったので、私はその皿を洗わず、前の食事の汚れがついたままの皿に食事を盛り付けていた。言うことを聞かないので、食事を抜いて2日程度食べさせないこともあった」

母親の虐待が子どもたちに与えた影響
 精神鑑定を担当した鑑定人は、愛美被告を「機能不全家族で育ったサバイバー」だと評した。「機能不全家族」とは、家庭内に育児放棄や虐待などが存在し、無意識的に子どもが抑圧されてしまう家族のことを指す。
こうした環境で育った子どもは、成長の過程で愛情を得る機会が乏しく、自尊心や自己愛、他者への共感などが欠けることがあるといわれている。事件の被害者である諒さんも同じサバイバーであり、また母親から特に暴力を受けていた。
 一方の父親は病気になるまでも、母親の調書によれば、「あまり話をせず、育児にまったく無関心で、子どもの名前を呼ばない、抱かない、話をしない。自分の部屋にこもっていた」という。愛美被告をはじめとする4人の姉弟たちは、そんな両親に育てられた。
 長女だった愛美被告は両親の離婚後、大学を中退。経済力を失っていた父親の代わりに仕事についた。未成年で学生だった妹たちや諒さんにスマホや服などを買い与えていたという。事件当時までスーパーのレジ打ちの仕事を続けていた。