広く世間に森田療法を理解してもらうために、あるいは学問的に明確に規定するために、かつて森田先生がいろいろ説明をされました。それは理論としてはもちろん必要なことでしたが、治療の実際から申しますと、その概念的に決めた事柄はことごとく治療の障害になります。

 そのため、前の院長、宇佐玄雄の講話と日頃の指導は、森田理論、学説を説明して理解してもらおうとするものではありませんでした。むしろまったく理屈抜きに、すぐその場に必要な事柄をとりあえず、いやいや手を出してやりなさい、ということに尽きるものでありました。