【ヴァルテル・ラブル博士が、絞首刑に関する質問に答えた第2回目の回答書】
http://deathpenalty-trial.jp/wordpress/wp-content/uploads/2011/11/Rabl_kaitousho2.pdf

質問13 現在の法医科学の見地から考察して、1952年に古畑博士が書いた上
記の意見書について訂正すべき点や追加すべき点はありますか。もしありましたら
御説明ください。

赤い文字にした原文中の文節(訳注 指摘の箇所は以下の引用中の下線部「それ故、
頸部に索条をかけて、体重をもって懸垂すると(縊死)、その体重が二〇瓩以上あ
るときは左右の頚動脈と両椎骨動脈を完全に圧塞することができ体重が頸部に作用
した瞬間に人事不省に陥り全く意識を失う。それ故定型的縊死は最も苦痛のない安楽
な死に方であるということは、法医学上の常識になっているのである。」)は明確
に間違っています。

 たとえ仮に脳内の血液循環が直ちに停止したとしても、脳内には多量の酸素が──
少なくとも数秒間は意識を保つのに十分なだけ残っているので、絞首刑において意識
の消失が「瞬間に」起こることはありません。ロッセンらの実験を参照してください
(ロッセン・R、カバット・H、アンダーソン・JP(1943年)
「ヒトにおける急性脳循環停止」〈神経学精神医学紀要〉50巻510〜528頁)。
著者は首の組織を圧迫するために、若い男性(111人)の首の周囲に血圧カフを
使用しました。600ミリメートル水銀柱の圧力で、被験者は5秒から10秒で意識
を失いました。その直後に全身のけいれんが起こりました。多くの者が性質と強度が
異なる疼痛を訴えました。古畑博士は意識が保たれて苦痛のある時間を考慮しません
でした。ロッセンらの論文中で、被験者はある程度の激痛を口にしました。