Dirの新譜神盤やな

devote my life泣ける、人間に戻れなくなってしまった化物の悲しみみたいなものを感じる

無限地獄だな、と思いました。
今作はこれまでのような抽象的で、捉えどころのない世界観ではありません。
特に歌詩は、名言されてはいませんけど、詩それだけを取り上げると最初から最後まで私小説のような明確なストーリーが浮かび上がります。
今作は、ある人間の、精神的な変遷を描いているのかも知れないと思います。

“俺さえ死ねばいい”と吐き捨て、両親に許しと断絶を懇願し、人を信じることを諦めようとして諦められず、死すら見据えたのに死ぬ勇気も出ず、そんな自分を赦してくれるわずかな人たちも傷つけながら、もがき苦しみ己を傷つけ、それでも自己を赦せそうな糸口を見つける。
詩の流れはこんな形で進みますが、意図してかそうでないか、リピートすることで痛々しく刺々しいほどの音の塊が、“Ranunculus”の福音的な優しさと歓喜に包まれて幕を下ろすのに、“軽蔑と始まり”に戻る。
だからいつまで経っても完結しない、無限地獄のような世界だな、と。