《知性というものが、蛇に似ていると気がついた古代人は偉大だね。そう思わないか?柔軟で、艶々しくて、?み所がなく、なんでも一呑みで消化して、頭から尻尾へという単純な一本の線にしてしまう。おまけに不気味で、凶暴だ。咬まれれば全身に毒が回る。》
『決壊』
《 ミサは、今にも崩れ落ちそうになりながら、必死で岡田にしがみついた。岡田は少し膝を曲げ、背中を丸めて彼女の体を支えた。髪から滴るしずくが、二人の肌の隙間に染み込んだ。》
『透明な迷宮』
《──つまり、罪の総量という考え方だった。 一生涯、完全に無垢なまま生き続けられる人間など、この世の中にいるはずがなかった。誰もが罪を犯すならば、それは重いか、軽いかでしかなかった。 》
『マチネの終わりに』
《僕に今、あの木の緑が、あのように美しく見えていることには、僕が生きていく上で、必要な意味があるのだった。》
『本心』
《完全な身勝手さに愛がないのと同様に、完全な献身にもまた愛はないのだった。》
『かたちだけの愛』
《Kは、これまで会った中でも、最も表情の乏しい青年だったが、ふしぎと悪感情は抱かなかった。例えば、大抵の動物には表情がない。村で出会すリスや雀は、僕に対して決して微笑みかけたりしないが、だからと言って腹が立つわけではない。》
‘消えた蜜蜂’『透明な迷宮』
《 フロントガラス越しには、憎悪に満ちた、運転手の必死の形相がはっきりと見える。
崇は、涙に濡れた目で、静かに’それ’を見つめた。轟音の渦中に一つの沈黙が冴えて、意識のあらゆる地表に、凄絶な火花が炸裂した。》
『決壊』
《ーー生きることと引き替えに、現代人は、際限もないうるささに耐えている。音ばかりじゃない。映像も、匂いも、味も、ひょっとすると、ぬくもりのようなものでさえも。 》
『マチネの終わりに』
《 母なりに、人生と果敢に渡り合っていたのだった。実際に、母を追い詰めたのはこの社会だった。母は、かなり奇抜な方法を選んでまで、「もう十分」という失意の底の底から脱け出して、どうにか”普通”であろうとしていた。》
『本心』
《道路を挟んで、互いの視線を交わらせたその時間の長さは、何事かが起こるには十分な筈であった。いや、起こらねばならなかった。それほど長い時間、人は意味もなく見つめ合ってはならないにではないか? 》
‘氷塊’『高瀬川』
《あれほど演奏するショパンの姿を観たがっていた聴衆が、まるで何者かの手でそっと両目を覆われるようにして次々と瞼を閉じてゆく。夜の色に響きがあるならば、夜の空気にリズムがあるならば、きっとこんな風であるに違いない。》
『葬送』
《潮騒は、遠近に重なりながら、沖へと向かうほどに声を失ってゆき、やがてただ海原の煌めきへと翻訳されて、彼方の水平線は、紙を折った背のように、斑なく澄んで、しんと静まり返っている。》
『決壊』
0999吾輩は名無しである2021/10/10(日) 11:45:07.74ID:9gvelyBj
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1000吾輩は名無しである2021/10/10(日) 11:45:22.37ID:9gvelyBj
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