ワイが文章をちょっと詳しく評価する![80]

レス数が1000を超えています。これ以上書き込みはできません。
0001ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE 2017/10/19(木) 22:37:08.77ID:8MdPj2g0
オリジナルの文章を随時募集中!

点数の意味
10点〜39点 日本語に難がある!
40点〜59点 物語性のある読み物!
60点〜69点 書き慣れた頃に当たる壁!
70点〜79点 小説として読める!
80点〜89点 高い完成度を誇る!
90点〜99点 未知の領域!
満点は創作者が思い描く美しい夢!

評価依頼の文章はスレッドに直接、書き込んでもよい!
抜粋の文章は単体で意味のわかるものが望ましい!
長い文章の場合は読み易さの観点から三レスを上限とする!
それ以上の長文は別サイトのURLで受け付けている!

ここまでの最高得点は75点!(`・ω・´)

前スレ
ワイが文章をちょっと詳しく評価する[79]
https://mevius.5ch.net/test/read.cgi/bookall/1506888591/

0952この名無しがすごい!2017/11/24(金) 09:21:01.50ID:9guX/fE3
>>951
ありがとうございます!
課題がんばってください。
んじゃまたワイ杯でーノシ

0953この名無しがすごい!2017/11/24(金) 09:47:45.71ID:hdItDyKL
>>950
おめでとうございます。正直羨ましいです。
私もファンタジーをですます調で書いているところです。参考にさせていただきます。

0954この名無しがすごい!2017/11/24(金) 12:09:08.88ID:VPTVfUaj
大畑、中島、ポッポ


ワイさんから見て、一番書ける人は誰でしょうか?

0955この名無しがすごい!2017/11/24(金) 14:04:43.29ID:9guX/fE3
>>953
ありがとうございます!
書いたらぜひ読ませてください。


>>954
ここに投稿して採点して貰えばいいじゃん?
そんな度胸もないんだろ?
つまんねー奴だなあ

0956この名無しがすごい!2017/11/24(金) 15:23:14.38ID:9y9Tyu0D
1700冊到達記念に宣伝。

記憶喪失した男の千冊順位付け 読んだ小説1000冊の面白かったランキング
https://mevius.5ch.net/test/read.cgi/book/1510647437/451

0957課題作品2017/11/24(金) 18:17:30.39ID:sdYlH6d3
『まだあげ初めし前髪の 林檎のもとに見えしとき 前にさしたる花櫛の 花ある君と思ひけり
やさしく白き手をのべて 林檎をわれにあたへしは 薄紅の秋の実に 人こひ初めしはじめなり
わがこゝろなきためいきの その髪の毛にかゝるとき たのしき恋の盃を 君が情に酌みしかな
林檎畑の樹の下に おのづからなる細道は 誰が踏みそめしかたみぞと 問ひたまふこそこひしけれ』
『まだあげたばかりの前髪が 林檎の木の下に見えたとき 前にさしている花櫛の 花のような人だと思いました 
白いや優しい手をのばして 林檎を私にくれたとき 薄紅の秋の実に 初めて恋をしました
なにげなくでた私のため息が その髪の毛にかかるとき 恋のすばらしさを 貴女のおかげで知ることができました 
林檎畑の木の下に 自然とできた細道は 誰が踏んでできたのでしょうと お聞きになる君が愛しいです』

これは『初恋』という詩だ。
作者は島崎藤村。彼の詩集『若菜集』には51編の詩が載っているが一番有名なのはこの『初恋』だろう。
この詩に登場する女の子が小道について尋ねた理由については色々な解釈がある。小道が何故できたのか分からないくらい天然だったとか。
分かってるけどあえて訊く小悪魔だったとか。良い詩や物語というのは色々な謎を残す。それについて人々は語りたいと思う。
その相手は友達だったり先生だったり、もしかしたら父や母かもしれない。だから良い謎がある詩や物語は世代を越えて語り継がれるのだ。それは謎と共に。

中学2年の時の話だ。夕方に初雪が降った日だった。
僕、西宮一樹(にしみやかずき)は一つの謎に直面した。朝、下駄箱を開くと『果たし状』が入っていたのだ。
ラヴレターではない。『果たし状』である。宛名部分に習字で堂々と記されている。めちゃくちゃ達筆だ。差出人は周防楓(すおうかえで)さん。
2年A組。同級生だ。全校集会で列を作ると前から数えて5番目あたり。髪は短い。眉毛は濃いけどちょっと短い。いつも目の下にくまを作って不機嫌そうだ。
けど、集合写真とか見返すとびっくりする位綺麗な顔の女の子だ。目が大きいからとか、鼻のラインが整っているとか、そういうんじゃないんだ。
『あれ? こんな綺麗な子、クラスにいたかな?』と思ってしまうくらい整った顔立ちをしている。その周防さんから果たし状だ。

僕の驚きは筆舌に尽くしがたかった。果たし状は空手のイメージだけど周防さんはバレー部だ。たまにセッターとして試合に出るくらいでレギュラーではない。
理科だけ学年一位を争うけど、それだけだ。対する僕は、学年総合首位の常連と言えば聞こえはいいけど、ただの勉強オタクだ。部活だって園芸部。
肩書きは部長だけど実質の切り盛りは副部長の四方原瑞季(よもはらみずき)さんがしてくれている。彼女にはお世話になりっぱなしだ。
お世話になりすぎて……。感謝の気持ちが恋に変わったのはいつからだろうか。一目ぼれとかではない。けど目は惹かれる。彼女の背がとても高いからだ。
全校集会では万年最後列。たまにバレー部に助っ人に借り出される運動神経の良さ。ポジションは背の高さを生かしたアタッカー。
試合では周防さんとコンビを組んだりしている。鼻がちょっと上向いているけれど、目がとてもきらきらしている女子だ。そばかすも可愛い。
最近こめかみにできたと気にしているニキビすらも愛らしい。何より誰とでも自然に分け隔てなく話せる気配りが素敵過ぎる。彼女は2年C組。
僕もC組だったらどんなに良かったか、といつも思っていた。後、背が高い親の元に生まれてたら、とも。というのも僕の背は列で言ったら7番目だ。
そこまで低くはないけれど、四方原さんと話す時はどうしても見上げる形になってしまう。 

話がそれた。
つまり僕は体育会系ではない。腕っ節は弱い。喧嘩やトラブルは余程の事でない限りは避ける。果たし状を貰うほどの恨みを買った覚えは無い。
この果たし状を見て心臓が飛び上がった僕は、慌ててこれをブレザーの内側にしまい込み、トイレにダッシュした。個室に飛び込んで封の上部に折れ線を入れる。
大きく破らないように慎重にちぎった。

『部活終了の17:00 貴殿を体育館裏で待つ。 周防楓』

叩きつけるようなど迫力の習字に、ため息が漏れた。

トイレから出て教室に向った。
ドアを開ける。周防さんを目が探してしまう。いた。最前席窓側に着席している。

0958課題作品2017/11/24(金) 18:23:27.01ID:sdYlH6d3
>>957
声をかけようか迷ったけれど、結局着席することにした。ちなみに僕の席は廊下側の最後列。周防さんとは対角線上の位置関係である。

……その日、視線はひたすら周防さんに吸い寄せられ続けた。けれど彼女は一度も僕と視線を合わせなかった。全ての授業が終了して、
担任の先生が今夜から雪が降るから風邪をひかないようにだとか、そんなことを言って終礼。
掃除が終ると、彼女はさっさと体育館に消えていった。部活のためだろう。

「どうしたの? 西宮君」 
園芸部室で、四方原さんが声をかけてくれた。僕はその時、心ここにあらずといった感じで、アドロミスクスという
多肉植物の鉢植えに霧吹きをしていたところだった。アドロミスクスは造形が卵みたいで可愛らしい。茎近くが薄い緑で先端に向うにつれて、
黄色から赤に変化していく。少しサボテンに似ている。乾燥にも強い点もサボテン寄りだ。だから、これに霧吹きを毎日する必要はない。
「え?」
四方原さんを見上げる。彼女は不思議な顔をした。
「昨日、西宮君霧吹きしてあげたでしょ。この子に」
「あ」
彼女が言う『この子は』アドロミスクスだ。頬が熱くなった。どうにかしている。でも理由も分かっていた。時計を見ると4時。
後一時間で『果し合い』だ。でも分からない。果し合いというのは、恨みのあるもの同士が決着をつけるために死ぬ覚悟で戦うことだ。
僕は死にたくない。犯罪者になるのだって嫌だ。それにもし周防さんが決死の覚悟で告白をしてくれるにしても、僕は……。

四方原さんを見上げる。真っ直ぐに彼女の瞳を覗きこんだ。
「ね、四方原さん」
「え?」 
四方原さんの瞳が動揺した。けど続ける。
「変な手紙貰っちゃったんだ」
「ええ?」
「だから、今日の僕は変なんだと思う」
大きく動揺する彼女に淡々と話す。誰かに話すとすっきりする。部活のことでも、よく四方原さんに相談した。彼女はいつも聞き役に回ってくれた。
それに聞き役だけじゃなく、こっそり根回しなんかもしてくれていたのを僕は知っている。簡単なチューリップではなくて手間のかかるベンジャミンを
部費で購入しようとした時とかね。

「手紙の……」
「内容は言えない。書いた人の尊厳に関わる」
 僕はきっぱりと言った。この時、四方原さんは寂しそうな顔をしたけれど、しょうがないじゃないか 
「そう」
「うん。だから明日になれば僕はしっかりしていると思うんだ」
「うん。西宮君」
「ん?」
「頑張ってね」
四方原さんは寂しそうに笑った。
彼女の笑顔に胸が苦しくなる。多分すごく誤解されている。ラヴレターだとか思っている。僕だって正直分からない。本当の果たし状なのか、
命を賭けたラヴレターなのか判然としない。けど誤解された上に応援とかされると、なんか、……もやもやする。

このもやもやを抱えたまま部活は終った。後片付けもそこそこに、部室の鍵を四方原さんに預けて、体育館裏に向う。校舎から外に出た途端、
冷たい風が顔に吹きつけてきた。首からうなじにかけた一帯が冷えて身震いする。雪が今晩から降る。寒くて当たり前だ。この寒い中を周防さんが待っている。
果たし状の意図がどうだろうと待たせたくはない。足が自然に速くなって、結局走った。

そうして駆けつけた体育館裏に、周防さんはいなかった。代わりに立っていたのは志摩軍旗(しまぐんき)君だった。彼は四方原さんの同級生。
僕と学年首位を争うライバルだ。帰国子女のためか英語が完璧。国語がネックだけどいつも95点を下らない。数学はいつも満点。背は僕より5cmほど高く、
体格もがっしりとしている。スポーツは団体競技以外は物凄い。100m走、砲丸投げ、走り幅跳び、全部が国体レベルの帰宅部だと四方原さんから聞いている。
彼女は体育で彼が記録を出すたびに陸上部入りを勧めるのだが、いつも『うるせえ』とだけ言われる。そして部室で愚痴を僕に漏らすのだ。
「もったいないよね。本当に凄いのに」

こんなに万能なのに彼は四方原さん以外の人とは全く受け答えをしない。学校行事はいつも休む。修学旅行ですら欠席した。協調性は皆無だと思う。
周りもそんな彼にはお手上げで、四方原さんを除いて、誰も彼に話しかけない。けど苛めに遭っている感じはない。くまの濃い三白眼に迫力があるからだ。

でも柄の悪い男子たちが、一度彼を校舎裏に引っ張って行くのを見たことがある。
僕は暴力が怖い。けどだからこそ止めに入るべきだと思って追ったら、すぐに彼が校舎裏から帰ってきた。気だるい歩き方だった。

0959課題作品2017/11/24(金) 18:28:33.83ID:sdYlH6d3
男子たちは次の日から不登校になった。多分、志摩君が何かをしたのだろう。でも彼が何をしたのかは謎だ。追及する気もない。怖いからだ。

そんな怖い彼が体育館裏に立っていた。気だるい視線を僕に寄越す。
脳裏を不登校になった不良たちの顔がかすめる。怖い。けど周防さんの名前を語るのは許せない。胸元から果たし状を取り出す。

「これを書いたのは志摩君?」
「違う。周防だ。あいつは西宮、お前を襲うつもりだった。理由はあいつに訊けよ。この先に拘束しといたから解(と)いてやれ」
志摩君は淡々と応えた。親指を立てて後方、冬場は使われないプールを指す。声に険しいものは無かった。それどころか何の感情も無かった。
僕は、そうか、と言って彼を通り過ぎた。その時、訊かれたんだ。

「四方原の事は好きか? 俺は転校するんだ。答えてくれ」
僕は彼を振り返る。
「好きだ」
声が驚くほど自然にでた。僕じゃないみたいだ。でもすぐに恥ずかしくなってプールに駆け出した。
それが志摩君と会話をした最後だった。次の日、彼は転校していた。

ちなみに周防さんは本当に拘束されて、プールの着替え小屋横の地べたに転がされていた。手首を後ろ手。手錠でガッチリ。
口に蛍光ピンクのガムテープを貼られていた。小さな鍵が同じ色のガムテープで彼女の横の壁に貼りつけられていた。位置は四方原さんの背の高さくらい。
明らかに志摩君の仕業だった。すぐに鍵をはがして錠を解いてあげる。けど周防さんは果し合いの理由については教えてくれなかった。
代わりに彼女は僕を凄い目で睨んで立ち上がり、毅然とした姿勢で去って行った。

次の日から、周防さんは殺し屋みたいな目で、僕を見てくるようになった。けど不良たちみたいに不登校にはならなかっただけでも、僕は嬉しい。
結局謎は謎のままだった。でも、誰にも秘密を守る権利があると思う。
 
……もう一つ、凄い事が起きたんだ。部活で四方原さんが目を合わせてくれなくてね。昨日の事を気にしているのかな、と思っていたら、部活の後、廊下で呼び止められた。
彼女は真っ赤な顔をして俯きながら、USBを渡してくれた。
「昨日、志摩君がくれたの。これ、……わたしも、だから」
そう言って兎みたいに通路を逃げていった。凄い勢いで遠ざかっていく背中に、狐に包まれたみたいな気分になったけど、帰宅後にUSBの中身を確認した。そしてびっくりした。

『四方原の事は好きか? 俺は転校するんだ。答えてくれ』
『好きだ』
音声ファイル。志摩君がこっそり録音していたのだ。僕は頭が真っ白になった。気がつけば四方原さんに電話をして、色々と恥ずかしいことを喚きたてていた。
その晩から僕達は付き合うようになった。
 
次の日、部活が終っても一緒にいて、帰り道も連れだって歩いた。昨日から降り続いた雪は止んで静かな夕方だった。間に一度融けた雪はまた凍って、
踏む度にザクザクと言う音がする。囃されているみたいだった。手をつなぎたいと強く思った。けど、僕には勇気が無かった。寒いし。2人ともダッフルコートだった。 
僕らは俯いて、それぞれ自分のポケットに手を突っ込んで歩いてたんだ。雪に埋もれた歩道に自然とできた細道は、生徒たちが踏んでできたものだけど、
変な傾斜を帯びてた。気がそぞろだったからだろう。僕の踵はつるっと前に滑った。僕は逆上がりをするみたいに大きく右足を宙に蹴り上げて、盛大に転んでしまった。
すごく惨めで恥ずかしかった。
「大丈夫?」
と四方原さんがダッフルコートを屈めて、手を差し伸べてくれた。うん、と言って、その手を掴む。
立ち上がって、手をつなぎ直す。その後もずっとつないで歩いた。雪がまたちらついてきた。祝福するみたいに。

しばらく進むと道はT字路に至った。正面にはセブンがある。右が四方原さん、左が僕。それぞれの家に続いている。一緒に歩く時間が終るのが惜しくて彼女をセブンに誘った。
「あたしも入りたかったの」
四方原さんは笑ってくれた。

雪道が寒かったからだろう。セブンに入ると四方原さんの頬は赤くなった。彼女の頬の赤さや、紅に混じったそばかすが林檎みたいで、
僕は島崎藤村の『初恋』を思い出した。そして思ったんだ。謎として語り継がれる『初恋』の彼女よりも四方原さんの方が、断然綺麗だし素敵だって。
後、冬が寒いのも良いなあ、とも。
というのも僕は寒くなると必ず風邪をひくんだ。だからあの日まで冬はあまり好きではなかった。
そういう点でも、これは大きな進歩かもしれない。

0960この名無しがすごい!2017/11/24(金) 18:39:30.79ID:sdYlH6d3
>>957-959
どうも、勅使河原作者です。23:55とかいっておいて、今提出しました。疲れた。
疲れすぎて眠い。寝たら明日の朝まで起きない気がする。締め切りを踏み倒す。
それはだめだ。という事で、ただいまの提出です。
そもそも俺に若い男女の心の機微を描かせるとか、間違ってるんですよ! 全くもう。智恵熱2回
出しました。
と、恨みつらみを述べつつ、自信は……微妙。若い男女のほにゃららなんてもん書いて、63点
以上取れれば、俺は満足です。
タイトルは『雪の日の林檎』です。
詳細を頂いた当初は周防と志摩が主人公たちでした。周防が殺し屋で、志摩が傭兵です。が、
本当に一般の子達という事で、こんな話になりました。
あ、お師匠さまが63点以上下さったら、「勅使河原君なりに頑張った! 君の努力には目を見張る!
手放しでたたえざるを得ない! 努力だけに限るが!」
というメッセージと受け取ります。
いや、もう本当に辛かったんです。本当に俺自身を褒めてあげたい。
おやすみなさい。

0961相模の国の人2017/11/24(金) 20:36:24.77ID:TQO/Tk8m
>>960
労作ですね! 私はその努力を称賛したいです!

0962この名無しがすごい!2017/11/24(金) 20:57:16.14ID:BAaLrG/9
なろうでも書いたけど、島崎藤村の『初恋』知らなくてびっくらこいた
これは70点どころの騒ぎじゃねえ! と

0963この名無しがすごい!2017/11/24(金) 21:13:51.58ID:hdItDyKL
とても良いと思いました。ワイさんの評価が楽しみです。
みなさんが課題を着々と提出してゆく。

0964相模の国の人2017/11/25(土) 03:23:25.38ID:77ImjIJb
真由の初体験 1話完結

 
「木津根真由、今回も頑張ったな! 98点」
  真由は国語を担当する松田先生に呼ばれて、先週行われた中間テストの答案を受け取った。
  答案を受け取る真由の顔から微かに笑みが零れる。
  そして、何事もなかったかのように、普段通りの澄ました顔で自分の席に戻っていった。
  次々に生徒の名前が呼ばれ、教壇に呼ばれ、答案を受け取る。
  生徒の顔は悲喜交々だ。
  授業が終わると、真由は学区内で一番の美少女と持て囃される山本明莉の席に赴いた。
  明莉の席の周辺には自然と女子生徒が集まってくる。
 「スゴイじゃん! また、クラスで最高の点数〜」
  真由が取った国語の点数を明莉が褒めてくれた。
  明莉は背が高い。
  175センチ、モデルみたいな体形、栗色のロングヘアに垂れ目が印象的なハーフ顔をしている。
  明莉と真由は一年からのクラスメイトで仲のいい友達でもある。
 「ううん。フツーにやってるだけだよ」
  謙遜した。
 「わたしは一生懸命勉強して、65点だよ〜って言っても一夜漬けだけどさ」
  倉持詩織が右手に持った自身の答案用紙をヒラヒラさせて渋い顔を見せる。
  ショートボブにスラリと伸びた綺麗な脚、巧みなメイク技術が際立つ。
  パンティが見えそうなくらい、短い制服のスカートが男子の視線を釘づけにしていた。
  自身を演出するのが上手い子なのかもしれない。
  詩織は2年の時、愛知県の長久手から横浜に引っ越してきて以来のクラスメイトだ。
  クラスメイトからはシオリンと呼ばれている。
  放課後は真由、明莉、詩織は放課後になれば、いつも一緒につるんでいた。
  横浜に行ってカラオケしたり、デパートに洋服やコスメを見に行ったり。
  一見すると普通の仲のいい友達だが、真由は二人に劣等感を感じていた。  
  オトコがいないことだ。
  明莉には大学生、詩織は本命の彼氏、セフレは何人もいる。
  一方、ワタシには誰もいない。
  真由にだって恋する気持ちはある。
  けど、二人みたいにオトコはゲットしたくてもできない自分に苛立ちを覚えていた。
  性欲も思春期らしくあった。
  好きな男の子を想像して身体って悶えることはしばしば。
  野毛の切通し沿いのマンションに住んでいる真由は帰宅して、誰もいないとベッドに潜り込みオナニーをしていた。
  想像するのは恋愛対象の男子、好きな俳優やタレントだ。
  文学が好きで多くの作家の本を読む真由は、自分でも小説を書くのが趣味である。
  大学ノートに自分を主人公にした恋愛小説の短編をいくつも、書いていた。
  内容と言えば、絶世の美男子が真由に告白して、肉体関係を結ぶという内容であった。
  いつも寝る前に等身大の姿見を見ながら、自分自身に話しかける。
 「どうして、ワタシはオトコに縁がないのだろう、顔は押切もえみたいに、可愛いのにさ」
  細長く鋭い目つき、狐のような容貌、笑ったときに見せる出っ歯と歯茎が印象的でとても美人とは言えなかった。
 「やっぱり、キツイ言い方がいけないのかな?」
  真由は告白して、振られるたびに激高し、「このハゲ! ワタシが受けた心の痛みがワカルカ! バカヤロー!」と叫ぶのだ。
  そんな時、クラスメイトの明莉や詩織が決まって真由を慰める。
 「大丈夫だよ。思いっきり泣いていいよ、真由の心の痛みはあたしの痛みだから……」
  明莉は目を潤ませ、真由をギュッと抱きしめる。
  その潤んだ瞳は美しかった。
  だが、心の奥底では振られた真由を嘲笑っていたとは夢にも思わなかったであろう。
  明莉や詩織のセックス体験の話を聞くたびに、焦りが強まり、早く経験しなければという強迫観念に囚われていた。
  誰もいない自宅の部屋で真由は栄養ドリンクの瓶を手に意を決していた。
  そこに挿入し初体験をした。
  痛みを堪えながらも、初体験をした安堵感を感じていた。

0965相模の国の人2017/11/25(土) 03:23:53.11ID:77ImjIJb
真由はさっそく、詩織に電話をした。
 「やっとしたよ〜!」
  話す真由の顔からは笑みが零れる。
 「したって、セックス?」
 「うん!」
 「おめでとう! 誰としたの、彼氏ができたの?」
 「ううん、江ノ島に行ってさ、そこでナンパされてさ」
 「すごいじゃん!」
 「うん。明日その話するね!」
 「じゃあ、学校で!」
 「じゃ〜ね!」
  そう告げると、電話を切った。
  休み時間に明莉の机の前に集まり、真由の初体験の話で盛り上がっていた。
 「真由、やったんだって?」
  明莉が尋ねた。
 「やっとね」
 「でも、大きな一歩だよ! あとは技を覚えないとね!」
  詩織が言った。
 「技って?」
 「フェラだよ、フェラ!」
 「したことないからな〜シオリンどうやって練習すればいい?」
  詩織はブレザーのポケットからチュッパチャプスを取り出して、包みを開けてイヤらしい表情で舐め始めた。
  器用に舐める詩織に集まった女子の視線が集中した。
 「スゴイ! こうやって練習するんだ〜」
  真由は驚嘆の表情を浮かべていた。
 「分かった?」
 「うん!」
 「そういえば、どんなオトコだった?」
  明莉が聞いてきた。
  真由にとって一番聞かれたくはない質問だ。
 「多分、地元の高校生、名前は聞かなかった、ただエッチしたかっただけだしさ、ストーカーもこわいじゃん?」
  巧みに真由は質問を暈した。
 「そうだよね。最近はストーカーも怖いしね」
  明莉は頷きながら言った。
  まさか、初体験の相手は栄養ドリンクの瓶でしたとは、口が裂けても言えない。
  しかし、真由は少女から女になったことだけは間違いない。

0966ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE 2017/11/25(土) 07:57:25.67ID:+X6VrcEw
>>957-959
>叩きつけるようなど迫力の習字に、ため息が漏れた。
(習字には書き方の意味もあるが、学習の意味合いが強いように思う! 筆墨と書きたいところだが、
 中学生らしくないので文字としてもいいだろう!)

>どうにかしている。
(「どうかしている」のような気がする!)

>時計を見ると4時。
>後一時間で〜
(数字と漢字、見栄えの観点でどちらかに統一した方がよい!)

>〜狐に包まれたみたいな気分になったけど〜
(「狐につままれる」が正しい!)

初々しい二人が登場して心を寄せ合う!
良い流れではあるが未消化の部分も多く、読後はすっきりしない!

この話は主人公の回想に思える! 何故、中学二年生の時のことを振り返っているのか!
その動機となる部分が書かれていなかった! すっきりしない原因の一つとなっている!
周防楓が関係する話の大半が暈けていた! 果たし状の意味は何だったのか! 西宮が口にした「襲う」とは、
どのような行動を表しているのか! その考えに至った理由は何なのか!
西宮の行動は理解できる! 四方原に好意を抱いていた! 転校が決まっていたので本心を打ち明けず、
心残りがないように二人を引っ付ける役を買って出たのだろう!

未消化の部分が非常に勿体ない! 島崎藤村の初恋に文字数を取られたことが惜しまれる!
初恋は触りの部分だけを引用して未消化の部分に文字数を費やした方が良かった!

抑えた筆致が初々しさに貢献して課題作品として仕上がっていた69点!(`・ω・´) 未消化の部分が足を引っ張り、課題クリアならず!

0967ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE 2017/11/25(土) 07:57:58.00ID:+X6VrcEw
>>964-965
>次々に生徒の名前が呼ばれ、教壇に呼ばれ、答案を受け取る。
(「教壇に呼ばれ」は不要!)

>放課後は真由、明莉、詩織は放課後になれば、いつも一緒につるんでいた。
(行頭の「放課後は」は不要!)

>明莉には大学生、詩織は本命の彼氏、セフレは何人もいる。
>一方、ワタシには誰もいない。
(三人称のような地の文に一人称が混ざっている! 今までの書き方で統一するのであれば、
 「ワタシ」を「真由」に置き換えた方がよい!)

>好きな男の子を想像して身体って悶えることはしばしば。
(歪な日本語に見える!)

>そこに挿入し初体験をした。
(あそこではないだろうか!)

>しかし、真由は少女から女になったことだけは間違いない。
(処女膜が破れたとしても少女は少女だと思うのだが!)
ワイの場合
 しかし、真由は少女から女になったと本気で思っていた。

文章が雑で推敲不足は否めない!
真由の行動が突飛で悲哀に満ちた笑いがシュールであった!
その主人公の容姿は物語の後半で明かされる!
二人の友人が登場する前に書いた方がよい!
彼氏の不在が主人公の劣等感になっていた!
多分に容姿が関わっているので説明に適した場面と云える!

課題に執心したことで文章が疎かになっていた65点!(`・ω・´) 拙速よりは巧遅の方がよい!

0968相模の国の人2017/11/25(土) 08:04:04.09ID:77ImjIJb
>>967
課題に執心すればするほど、強迫観念に囚われ、蟻地獄。
まだまだ、頑張るぞ! 今度は慎重に!

0969相模の国の人2017/11/25(土) 08:10:57.89ID:77ImjIJb
>>967
講評、本当に有難うございました。またチャレンジします!
本当はオ〇ナミンCかリ〇ビタンDと入れようと思いましたが、栄養ドリンクにしました。
「初体験の彼氏がオ〇ナミンなんて、口を裂けても言えない」のほうが、インパクトが強いのでしょうが。

0970ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE 2017/11/25(土) 08:15:10.66ID:+X6VrcEw
>>969
なんだって!?(・`ω・´;)

チュッ○チャプスとはっきり書かれていた!(`・ω・´)

0971ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE 2017/11/25(土) 08:35:03.48ID:+X6VrcEw
スレッドの容量が623KBと表記されている!
この状態で1000まで行けるのだろうか!
用心の為に次スレを立てた方がいいのか!

中々に悩ましい!(`・ω・´)

0972この名無しがすごい!2017/11/25(土) 08:55:49.91ID:rMBPwY6m
>>966
おはようございます。
未消化部分はなろうでも不評でした。
俺も、うーん、という感じでしたが、字数が。
初初しさは出せていたのが嬉しいです。
島崎藤村の天才ぶりへのリスペクトあんど
全文引用しないと初初しさなんて絶対表現
できないだろうという自信のなさが
構成に影響したと敗因分析です。
が! 63点クリア!
努力は認められた! てことでワイ杯頑張ります。
>>961
ありがとうございます。めちゃくちゃ苦しみました。
が、勉強になりました。
>>962
島崎藤村良いよね!
あの人は天才。初初しさという物が分からんくて
青空文庫の若菜集を読破しちゃったよ。
>>963
ありがとうございます!
自由さんも課題頑張ってくださいね。

0973ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE 2017/11/25(土) 09:06:36.52ID:+X6VrcEw
>>972
え、初々しい二人の課題で再チャレンジしないの?(`・ω・´)

0974この名無しがすごい!2017/11/25(土) 09:08:37.24ID:IVJHb8Q3
さっさと流すというのも一つの手段

0975ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE 2017/11/25(土) 09:20:35.91ID:+X6VrcEw
流れを無理に押し止めて澱むよりはマシと云うこともある!

勅使河原君の課題はここまでとする!(`・ω・´)

0976この名無しがすごい!2017/11/25(土) 09:28:35.28ID:rMBPwY6m
>>973
ドSだ! ドSがいる!
俺の苦悶は伝わってるはずなのに全くもう!



また1から組み直しなので、提出は12月に
なると思います。
知恵熱出さないように頑張ります。

0977この名無しがすごい!2017/11/25(土) 09:30:34.23ID:rMBPwY6m
>>975
お。
了解です!

勉強になりました。ありがとうございました!

0978この名無しがすごい!2017/11/25(土) 09:38:09.43ID:6skgWw90
みなさん課題お疲れ様です。
楽しそうでなにより!

0979この名無しがすごい!2017/11/25(土) 10:03:02.00ID:xzcgKkSe
>>974
スレのことだよね?

0980この名無しがすごい!2017/11/25(土) 10:07:29.27ID:ZETUcSnt
美世の全体評価とお題お願いします。

0981この名無しがすごい!2017/11/25(土) 10:10:50.01ID:IVJHb8Q3
>>979
そうだよ

0982この名無しがすごい!2017/11/25(土) 11:13:34.42ID:4SjM8EwT
埋め

0983この名無しがすごい!2017/11/25(土) 11:13:52.54ID:4SjM8EwT
うめうめ

0984この名無しがすごい!2017/11/25(土) 11:14:17.97ID:4SjM8EwT
梅ヶ枝餅

0985この名無しがすごい!2017/11/25(土) 11:16:54.27ID:7aa1dAN5
こちらにどうぞ

文章のプロ中島英樹先生が文章を批評するスレ
http://mevius.2ch.net/test/read.cgi/bookall/1511573955/

0986この名無しがすごい!2017/11/25(土) 11:24:59.55ID:4SjM8EwT
>>985
臭うからこっち来んなよウンコ

0987この名無しがすごい!2017/11/25(土) 11:46:42.05ID:0K/qSLUz
相模さんの飽くなき挑戦心。
てっしーさんの主人公達の初々しさ。
皆さんを尊敬します。

0988この名無しがすごい!2017/11/25(土) 13:05:45.88ID:rxLSeNzK
新月の夜に光はない。闇しかない。先進国の都市部は夜とは言わない。あれは馬鹿みたいな照明焚いてるだけだ。
人以外の何か、物の怪の気配。あれを感じれるのは、新月の夜だ。人がいない代わりに、森が、泥沼が、そして死が在る場所。
電力の供給も遮断されて、火を焚こうもんなら、9mm弾が飛んでくる場所。
それが戦場だ。そしてこの戦場が、俺、志摩軍旗が一番落ち着く場所でもある。
物心ついた時には、傭兵稼業の親父と戦場を巡っていた。子連れ狼の現代版だな、と俺を高い高いしながら、フランス人の傭兵が言っていたのを覚えている。
子連れ狼は分からなかったが、『日本かぶれが』と嬉しそうに笑う親父の顔は、俺の脳味噌にしっかりと刻まれた。 
戦場では一通りの事を学べる。読み書きは武器の取り扱いに必須だ。爆弾物の処理。食糧の調達。空いた時間は武器のメンテナンスと訓練。
それでも余った時間は親父と本を読んだ。

12歳になる頃には、俺はいっぱしの少年兵になっていた。

俺に一通りの技術、そして経験を積ませたからだろう。ある日、親父は『お前に日本を見せたい』と言った。
その1週間後には、北海道の中学校に転入させられていた。
『せっかくだ。色々見ておけ』と親父は笑顔で言った。そして叔父に俺を預け、姿をくらました。
それがミッションだと思った。ミッション、つまり任務だ。
中学校には戦場とは違う社会があった。蟻の巣みたいなもんだ。ちっちぇえ中で色々している。俺は蟻も食べるが、まみれるのは好きじゃねえ。
だから誰とも関わることはしなかった。観察は嫌ってほどしたけどな。クラス全員の名前。趣味志向。部活。人間関係。まあ色々だ。

全員蟻みてえなもん、……でもなかったな。1人だけ違った。
四方原瑞希。ひたすら明るい女だ。鬱陶しい程の節介焼きだ。一番意味がわかんねえ女でもある。
分からねえ事は、考える必要はねえ。
が、親父のミッションは『色々見ておけ』っつう事だった。
だから四方原に一番の注意を払うことにした。いや、したかったんだな。俺の目はあいつを追う。飛びぬけて別嬪とかじゃねえ。が、とにかく目を引く女だ。
奴を追う内に、あいつの周りの人間関係が見えてきた。
園芸部長、西宮一樹。ひょろっこいが頭が良い。
勉強って意味じゃない。
慎重だが決断は大胆だ。戦場では長く生きるか、あっさり死んじまうかのどっちかだろうな。
バレー部員、周防楓。こいつは俺と似た臭いがする。硝煙というより、血だ。
ごくたまに戦場で出会って、親父が苦戦してた種類の人間。ヒットマン。殺し屋だ。しかも現在進行形ってやつだ。闇社会の格闘士かもしんねえ。
聞いた事がある。巨大企業の利得を賭けて、試合が行われる闘技場。
目にくまを作っているのは、夜に『仕事』をしているからだろう。殺しか試合かのどっちかだ。
向こうも俺に気付いているはずだが、あえて接近はしてこない。まあ、戦闘しないに越したことはない。

周防について観察をしているうちに、気がついた事がある。あいつは、バレー部だが、試合の時は隙だらけになる。いつもじゃねえ。
四方原と組んでる時だけだ。バレーボールにだけ集中し、四方原と呼吸を合わせようとしている。恋する女みてえな、献身。
そのうち気付いた。みてえな、じゃなくて、そのものだ。あいつはバレーか、四方原に恋をしている。おそらくは四方原だ。
難儀なことだな。性別の壁越しの恋か。しかも四方原が好きなのは西宮だ。

以前の俺なら、ここで周防を哂ったことだろう。戦場には腐るほど変態野郎がいる。俺も襲われかけた。そして返り討ちにしてきた。
が、周防の事は笑う気にはなれない。俺は四方原が好きだからだ。『色々見ておけ』がミッションだ。
『色々工作しろ』じゃねえ。
ただの傭兵に、平和な国の浮かれた餓鬼どもに介入する義務も資格もない。だが、四方原には介入したかった。
見る、というミッションの範囲を越えて、あいつの家に盗聴器を仕掛けたりした。声、会話、色々な音。
聴くと腰がうずく。熱をもつ。苦しい。
自慰で解消できそうな感覚だった。が、自慰は危険だと親父に言われている。だからしない。馬鹿になるからだ。苦しい中で、研ぎ澄ます。それが傭兵の条件だ。
俺はひたすら聴覚を研ぎ澄まし、微かなズレを知覚した。共鳴反応。ジャミングが起きている。もう一つ、誰かが四方原の家に盗聴器を仕掛けている。
そんな奴は1人しかいねえ。周防だ。くそ、どこまで同じ穴の狢なんだ、全くよお。

0989この名無しがすごい!2017/11/25(土) 13:07:40.32ID:rxLSeNzK
>>988
「周防だろ」
返事がくるまで3時間かかった。
「……志摩軍旗、か」

これが周防との初めての会話だ。中学2年の夏。俺は四方原の家にスピーカーを設置した。周防と話したいと思ったからだ。
3時間の間に、周防は四方原の家に出向いて、スピーカーを設置したはずだ。あいつは俺のスピーカーを探したはずだが、見つけられなかった。
俺もあいつの盗聴器を探したが、発見できなかったからな、おあいこって奴だ。

「ああ、俺だ。やっぱりお前だよな。こんな事する奴、俺かお前しかいねえ」
「用件は何だ? 手短に言え」
「今、お前は迷っている。俺を始末するべきか。生かしておくべきか。始末するのは簡単だと思っている。お前は高慢ちきだ。けど俺は四方原と同じ組だ」
「……」
「沈黙は図星って事だよな。お前は四方原が悲しむ事はしたくない。あいつの事が好きだからな」
「今からお前を始末しに行く」
「俺は傭兵だ。殺し合いの経験なら、お前より長いぜ」
「……待っていろ」

この会話の1時間後、俺たちはやり合った。
これが最初のやり合いだった。
その後も、何十回とやり合ったが、パターンは大体決まっていた。
あいつは夜の闇に紛れて襲ってくる。俺は赤外線センサーをつけて迎撃する。

環境を生かした戦いなら俺だ。ただし決め手にかける。直接戦闘ならあいつの方が強い。
周防は搦め手に弱い。殺し屋だけあって気も強いが、やはりプロだ。冷静で、仕事に障ることはしない。

やり合った後は、短いが会話をした。言葉は多ければいいってもんじゃねえからな。濃密な会話だ。

その会話で周防について色々な事がわかった。
あいつはプロの殺し屋。闇社会の賭け試合で生活している。趣味はバレー。やっぱり四方原の事が好きだ。それは俺と同じだな。

四方原が西宮の事を好きだって分かっているのも、同じだ。殺し屋だもんな。見抜けて当たり前だ。
ただ違うのは、あいつは西宮を始末したいと思っている。
理由は嫉妬だ。まあ、性別の壁からくる嫉妬で、世の中の『四方原と恋愛をする資格のある若い性別保持者』
全員を、本当は始末したいらしい。若い男は全員始末したいっつうのも、ぶっ飛んでるが、あいつらしい。
「ギリギリなんだな。大変だ。俺もお前も。まあ、俺は西宮を応援してっけどな」
「あんたが冷静を気取ってるだけでしょ。始末したいと思わないってのは、嫉妬もない。嫉妬すら抱けないうっすい感情で、あたしと同質感を持たないで」
きつい言葉だが事実だ。俺は親父が寄越したミッションをこなしている。少し外れても、大きくは外れない。介入はしないし、できない。
西宮には四方原を幸せにして欲しいし、あいつにはその能力がある。

秋に親父がひょっこり現れた。ミッションの進捗を訊いてきたから、色々全部ぶちまけると、親父は豪快に笑った。
それから、すっげえ優しい目をして、俺の髪をくしゃくしゃにした。
「軍旗。お前は良い仕事をしてるな。で、だ。得意先から仕事の依頼がきた。中東だ。俺とお前、セットでご指名だ。行くか? 
それともここでまだ、殺し屋のお姉ちゃんと初々しい中学生たちを『見ていたい』か?」
「行く」
俺は即答した。俺は傭兵だからだ。そうして生きてきたし、これからも生きていく。
親父は歯をみせて、にやりとした。
「そう言ってくれると思っていたぜ。さすがは軍旗、俺の息子だ。出発は明後日だ。準備しとけよ」
そう言って親父は立ち上がり、叔父さんに挨拶をして玄関から出ていった。
玄関を使うのは、親父にしては珍しい。日本って感じがして、切なくなった。俺はこの国に愛着が湧いている。

その晩、俺は周防に連絡を取った。
四方原と西宮を恋人にさせる。両思いだから簡単だ、と伝える。じゃあわたしは西宮を始末する。堂々と果し合いを正式な手順で申し込み、潰す、という返事がきた。
勝手にしろよ、ただし俺はお前を阻止する、試合を潰されたら四方原の事はあきらめろ、元々赤い糸でつながってる奴らだ、と俺は伝えた。

翌日、俺は周防をがちの戦闘で破り、四方原と西宮をカップルにした。胸の奥が甘く疼いたが、これが恋ってやつなんだろうな。

0990この名無しがすごい!2017/11/25(土) 13:09:04.52ID:rxLSeNzK
>>990
周防に勝てたのは、昼だったからだ。闇の中ではあの頃の俺には無理だった。

四方原と西宮がカップルになった次の日の夕方。
親父のヘリが到着するまで時間があった。俺は四方原と西宮が下校する姿を遠くから眺めていた。
2人とも、歩き方がぎこちない。緊張してるんだろうな。
全く初々しいぜ。まあ、日本を発つ直前まで見守る俺も大概だけどな。

俺の隣には周防がいた。酷く恨めしい目で、西宮を睨んでいる。四谷怪談にも出れそうな、恨み具合だ。
「狙撃とかすんなよ」
「しないわよ。わたしだって弁えている」
どうだか、と思ったが、口には出さない。

西宮が転んだ。四方原が屈み、あいつらは手をつないだ。映画とかならクラッカーでも破裂するんだろうな。
代わりに周防がしゃがみ、両手のひらに顔を埋めて泣き出した。
俺は肩をすくめた。
周防は泣き続ける。雪が降ってきて、こいつの頭に積った。払ってやると、さわんないで、と手を払われた。
まあ、それはそうだ。俺は四方原じゃない。
「あんた…じゃ駄目…なのよ」
かすれたアルト。
「ああ、そうだな。四方原じゃねえと駄目だ。四方原も、西宮しか受けつけねえ」
「知ってる……!」
また泣き出した。小さな、無防備な頭だ。殺し屋らしくねえ。
俺は、こいつが落ち着いたら、汁粉缶でも買ってやろうと思った。殺し屋になんか買ってやろうと思ったのは、初めてだ。

……あれから5年過ぎた。
今俺は中東の戦場にいる。都市の奪還戦。最終攻略。仲間たちは先に拠点に仕掛けて、俺の部隊が迂回して後方から叩く。
昼から始まった戦闘は、新月の夜になっても続いている。最終だけあって、敵も必死だ。俺はゆっくりと闇を這う。焦らずに進む。
親父は2年前に死んだから、『焦るな』と言ってくれる奴はいない。

視界がブラックアウトした。赤外線装置の故障か? いや、外部からも音が消えた。代わりに悲鳴。かけ声。停電か。いや、これは電磁パルスだ。
範囲はわからねえが、使った奴がいる。新月の闇で、敵も味方もお手上げだ。
ひゅっと風切り音がした。くぐもった唸り声。後方だ。風切り音と唸り声が続く。襲撃だ。建物内、しかも闇の中では銃は封殺される。
ひゅっという音と共に、暗黒の中、味方がなすすべもなくやられていく。酷い状況だ。けど、なんだこれ。懐かしい音だ。
俺の部隊は6人。5人目がやられた時、俺は闇に向かって口を開いた。
「周防か?」「……」
返事は無い。代わりにがつん、と衝撃。どこだ。顎だ。顎を蹴られた。闇を俺はごろごろと回る。
背が壁につく。俺は床に腰をおろしたまま、脚を緩く曲げて、右手で小銃を構える。
この音。風切り音は周防だ。
闇の中。あいつは俺を切るのではなく、蹴った。やれたはずだ。
ひゅっという音。斬撃。軌道は、そうだ。俺の手首だ。奴の目的が俺の始末ではなく、無力化なら、銃を持つ手首を狙う。
だから俺は銃を握る手首を、くいっと曲げた。がん! というでかい金属音。銃身と刀身がぶつかって、火花が散る。
綺麗な花だ。俺は闇に脚払いをする。刃の軌道、衝撃と火花の角度。そこから推測される二の足に、脚を絡め、倒し、馬乗りになる。
闇の中で長物相手に馬乗りは自殺行為だが、それは相手に『殺意』がある場合だ。柄を握る腕を極め、遠くに放る。改めて訊く
「周防だな。久しぶりだな。俺の仕事を邪魔しに来たのか」
「……」
返事は無い。俺もこいつを潰したくはない、が、仕事だ。腕を潰して、首を絞め、気絶させよう。
「あんたを止めに来たの」
久しぶりの、周防の声だ。俺は何故か、胸がくすぐったくなった。言葉を出せない。
「志摩、あんたがここを攻略するって、闇社会で情報を得た。この先を守っているのは、勅使河原蔦子。あんたじゃ勝てない。確実に死ぬ」
「周防、お前は優しいな」
闇の中で、口元が緩んだ。本当にいい奴だ。そして不器用だ。俺を止めるためだけに、電磁パルスを使って、部隊も壊滅させた。
勅使河原蔦子か。その筋では有名な女だ。部隊は俺1人。退くか進むかなら、退くのが適当だろう。が、これは最終攻略だ。
俺があの女を引き付けているうちに、表の部隊が全体を制圧すればいい。そうだ。俺は進むべきだ。
「だがこれは仕事なんだ」
俺はそう言って、周防の首にフロントチョークを極め、気絶させた。

さて、この闇が地続きする先には、最強の女、勅使河原蔦子がいる。
俺はひとまず、手持ちの装備を確認することにした。

0991この名無しがすごい!2017/11/25(土) 13:18:35.11ID:rxLSeNzK
>>988-990
課題終了の開放感に空かせて書き下ろしました。
題名は、『新月の刃』です。

0992この名無しがすごい!2017/11/25(土) 13:22:17.68ID:rxLSeNzK
産め

0993この名無しがすごい!2017/11/25(土) 13:22:46.84ID:rxLSeNzK
ume

0994この名無しがすごい!2017/11/25(土) 13:23:23.23ID:rxLSeNzK
um

0995この名無しがすごい!2017/11/25(土) 13:26:16.91ID:8uDZrJ/N

0996この名無しがすごい!2017/11/25(土) 13:26:32.13ID:8uDZrJ/N

0997この名無しがすごい!2017/11/25(土) 13:33:31.68ID:4SjM8EwT

0998この名無しがすごい!2017/11/25(土) 13:33:37.30ID:4SjM8EwT

0999この名無しがすごい!2017/11/25(土) 13:34:19.61ID:z4X63YIt

1000この名無しがすごい!2017/11/25(土) 13:34:37.38ID:z4X63YIt

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