“赤”が監視システムを警戒してろくに口をきかないので、
近所の焼鳥屋の個室でキックオフ・ミーティングを兼ねて
意見調整のための懇親会。その場で“赤”から、
フェミニズムの立場からのポルノ批判が述べられる。
それに対して“白”は、ポルノグラフィとエロティカについて
論陣を張る。「だいたい、ポルノ“グラフィ”っていうことは、
“文学”という訳であって、アダルト“ビデオ”という表現に
当てはめること自体が間違っているんです。それを言うなら、
ポルノ“グラム”の筈です。それを総称して『ポルノ』と
呼ぶにしても、所与表現である『ポルノ』は、
性愛を表現した『エロティカ』とは区別されるべきものです。」
「つまりは、“感じたふり”、“イッたふり”がポルノで、
本気でイッてればエロっていうことですよね?」と“青”。
「そういうこと。ですから、画像と音声から、
本気だっていうのが客観的に検証できたとすれば、
それはポルノではなくてエロだということ。
逆にいえば、ポルノとエロの間に客観的な境界線を引くことが
できるのなら、セックス・ヘイターによる似非フェミニズムを
排除しうるという意味で、フェミニズムに貢献できるはずなのよ。
たとえばの話、強姦とSMプレイを区別するシステムなんていうのは
現在の技術でも実現可能だと思うのよ。」
「AVとかをサンプルにして、検証とかできませんか?」
「ああいうものは編修もされてるし、実際に感じてたかどうか
確認できるものでもないし……脳波とか心拍数とか体表面温度とか
モニターして、被験者からの聞き取り調査の結果と照合するとか
しないと、客観的なデータは得られないと思うのよ。」