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 「いろは」短歌

 我我の生活に欠くべからざる思想は或は「いろは」短歌に尽きているかも知れない。

   希臘人

 復讐の神をジュピタアの上に置いた希臘人よ。君たちは何も彼も知り悉していた。


   人間的な、余りに人間的な

 人間的な、余りに人間的なものは大抵は確かに動物的である。


   運命

 遺伝、境遇、偶然、――我我の運命を司るものは畢竟この三者である。自ら喜ぶものは喜んでも善い。しかし他を云々するのは僣越である。

   嘲けるもの

 他を嘲るものは同時に又他に嘲られることを恐れるものである。


奴隷

 奴隷廃止と云うことは唯奴隷たる自意識を廃止すると云うことである。
我我の社会は奴隷なしには一日も安全を保し難いらしい。
現にあのプラトオンの共和国さえ、奴隷の存在を予想しているのは必ずしも偶然ではないのである。

忍従

 忍従はロマンティックな卑屈である。