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 「メキシコ国境の向こう側には、中国が新鋭の工場を次々に建て、中国製品が無税でアメリカ国内に流れ込んでいる。これによって勤勉な白人労働者は職を奪われつつある」

 トランプ候補はこう述べて、自由貿易協定によって、優良企業が次々にアメリカから逃げ出し、失業者を大量に生み出していると人々の怒りを煽り立てた。
政策も実績も政界へのコネも人脈も何もトランプを勝利に導いたのは、現状の政治家や政党へ不満を抱く人々の「怒り」と「恐怖」を煽り、
人間の本能的防御メカニズムを惹起するという原始的かつ巧妙な手法だった。

トランプ氏を大統領に押し上げたのは、没落した中間所得層やプアホワイトと呼ばれる所得の低い白人の労働者層だった。

こうした人々は「俺たちは社会や世間から見捨てられた」「既存の政治家は全員腐敗している」
と事実上の既得権益者であるエスタブリッシュメントに対して憤りを感じている
けっきょくのところ、かつての民主党の支持基盤はあっという間にトランプによって切り崩されてしまった。

景気指標から言えば、「米国経済は好調だ」ということになっている。だが、普通の国民が好況に沸いているかといえば、違う。
企業業績が好調であっても、失業率が5.1%まで下がっていても、政治不信は強まっている。
だからこそ、「この国は日に日に偉大でなくなりつつある」「中国の指導者は、われわれの指導者よりも賢い」
といったトランプ氏のメッセージがリアルに響くのであろう。

トランプ次期大統領には、アメリカにいまこそ健全な中間所得層を創り出す政策が必要だ。中間所得層の支持を得られなければ短命政権に終わってしまうだろう。