>>311
「ガォー」。泣き声よりも、悲鳴、声が歪んだ悲鳴。仰向きの熊は目を丸くし、四本の足は限られた狭い空間の中で地面にしがみ付こうと懸命に動く。
ポタ、ポタ、腹部に差し込まれた金属チューブから緑色の液体が垂れてくる。
縄が緩められる。そして、もう一回締め付ける。悲鳴。
熊の目から涙が流れている。彼は人間と同じように歯を食いしばって苦痛に耐えているのだ。

 「あなたたち、それでも人間か!」。私は張さんに怒鳴りつける。
 「私たちも仕方なくやってます。これが仕事なんですから」
 「・・・・・・どのくらいの頻度で搾汁するのか」
 「状況次第、胆汁が多いときは1日2回、少ないときは2日に1回、通常一匹の熊から取れる胆汁粉は年間2000グラム、十年くらい取れます」
十年?私は震えだす。
十年、悪魔の十年、激痛、残虐な刑罰、1日2回、今日も明日も、一日また一日、一年また一年、そして十年、7200回もの苦痛に耐える熊たち・・・
しばらくすると、小熊の「手術」が始まった。
今度は大男作業員四人がかりで鉄鎖で小熊を縛り付ける。恐怖に怯える小熊が、じーっと私を見つめる。「助けてください、お願いだから・・・」
「手術」が始まった。小熊の絶望な号泣が響き渡る。「かあさん、助けて」。間違いなく、私にはそう聞こえた。
そのとき、異様な光景が現れた。一匹の親熊が何と力尽くで鉄の扉を広げ、檻から脱出した。親熊が小熊の前に駆けつけ、鎖を一生懸命開けようとた。が、どうやっても開けることができなかった。
親熊は小熊の涙を舐め取りながら、小熊を抱擁した。
突然、親熊が巨大な手で小熊の首をつかみ、全力振り絞って、締める、締める、締める。小熊の体がふにゃりと倒れこんだ。
ごめんなさい。かあさんはあんたを助けることができない。ごめんなさい、ごめんさない。でも、あんたはもう苦しむことないよ。ごめんなさい・・・