人手不足なのになぜ賃金は上がらないのか−米雇用の謎

失業率がこれほど低い労働市場は「タイト」とみなされ、通常、企業が人手を見つけるのに苦労する中で賃金は急ピッチで上昇する。
だがこれまでのところ、賃上げペースは依然鈍い。5月の平均時給は前年同月比2.5%増となり、昨年8月以降で最低の水準に並んだ。
賃金の伸び悩みは1つの「謎」とされてきた。多くの人が仕事を探すのをやめたため、労働供給量は失業率からうかがえるよりも多く、この「見えない」労働力があるせいで賃金は低く抑えられている、という説明が一般的だ。
このような労働市場から外れた人たちはあまりに長く脇に追いやられたままになっているため、もはや存在しているかどうかも分からなくなってしまった。
生産年齢人口に占める労働力人口(働いているか求職中の人)の割合である労働参加率は、実際のところ5月に低下した。
ジョンズ・ホプキンス大学金融経済学センターの共同所長、ロバート・バーベラ氏は、失業率の水準だけでなくその水準に到達するまでにかかった時間にも目を向けることが重要だと提言している。
 失業率がリーマン・ショック後のピークである09年10月の10%から直近の4.3%まで下がるのにかかった年数は7年だ。この7年間、経済成長が低迷していたため、企業は人員拡大のための賃上げを急ぐ必要がなかった。
また、労働者は働き口がたくさんあると感じたことなど一度もなかった。
経済成長がこれほど緩慢だと、人々は雇用を確保できるという安心感が持てないため賃上げを要求できない。しかも、多くの労働者はこのような状況を経験したことがない。
2000年代の雇用情勢は住宅部門以外、あまり良くなかった。90年代の好況下での「売り手市場」を知っているのは年齢40代以上の労働者だけだ。米国の雇用市場は少し日本に似てきたのかもしれない。
日本では、失業率が約四半世紀ぶりの低さに達しているにもかかわらず、もう何年も期待を裏切られてきた労働者は賃上げ要求に及び腰で、雇用主側も賃上げには消極的だ。

ttp://jp.wsj.com/articles/SB10372492675706814214504583188310409472102

アメリカの日本化