「軍事研究」7月号の軍事ライターの文谷数重氏の
「火力支援なき島嶼奪還作戦の悲劇」

(前略)
比較的防備された正面に上陸であり、しかも後の内陸進攻により島嶼や沿岸部を占拠する行動だ。
だが、そのような上陸戦は実現できるだろうか? 困難である。
なぜなら上陸部隊以外がおざなり、あるいはなおざりなためだ。
陸戦部隊としての水陸機動団整備には熱心だ。だが、その活動を支える各種の関連機能の強化手配には余り熱心ではない。
艦砲射撃を行なえる護衛艦の数が限られる上に、比較的強力な5インチ砲搭載艦は、就役間近の「あさひ」を含めても18隻しかない。
搭載する砲弾数も限られるし、艦載砲は曲射に向かない。そもそも、護衛艦は制海権確保のために必要だ。
一方、航空支援も航空自衛隊の戦闘機部隊は、制空権獲得と維持に投入されるから、上陸戦の近接航空支援に貴重な戦闘機を充てる余裕はない。
また、海上自衛隊隊のP‐1やP‐3Cには長い航続力があり、JDAMやSDB、マーベリックを搭載しておけば、
オンコールの支援はできるが、制海権維持のために対潜捜索や敵水上部隊への対艦攻撃等が優先されるから上陸戦の火力支援に多数を回す余裕はない。
 結局、航空支援は陸上自衛隊がやらなければならい。陸自対戦車ヘリ等を海自艦船あるいは陸自傭船に搭載して航空支援するしかない。
何より迅速確実である。対戦車ヘリは自力で目標を捜索・照準可能であり、効果も確認できる。
(中略)
もちろんヘリは脆弱である。最近言われるように攻撃ヘリも携SAM等には対抗し難い。
だが、より脆弱な上陸第一波は何があっても護衛しなければならない。
揚陸艦から海岸までの舟艇移動、あるいはヘリボーン部隊がランディングするまで保護しなければならない。
これは対戦車ヘリが落とされてでも、実施しなければならない。ヘリが無事でも舟艇や輸送ヘリ、
兵員装備が失われれば、上陸作戦としての意味をなさないからだ。
(中略)
本来なら、この航空装備不足は陸自にとって最優先の課題である。上陸戦に組織の生き残りを賭けるならそうしなければならない。
遊兵と化している在北海道戦力の維持や、無駄な戦車更新、本土でのタイヤ式戦車の導入を取り止めてでも実施すべき施策だ