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現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。
そこにあるのは、
いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。
本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。
今回は派遣専門の介護職員として働く、サトシさん(34歳)のケースに迫る。

サトシさんとは自宅近くのファミリーレストランで会った。
見せてくれた貯金通帳の残高は「0円」。
今年に入ってからは日々の食費にも事欠く状態で、「主食」はモヤシと賞味期限切れ間近で値引きされた豆腐だという。
スーパーの試食品コーナーを回ったり、100円ショップでそろえた釣り具で、近くの海で魚をとったりすることもある。
ここ数日は、自販機の下に落ちていた100円で買ったパスタを塩ゆでにして腹を満たしている。
水道代を節約するために、用を足すときは最寄り駅に隣接した商業施設内のトイレを、シャワーは派遣先の介護施設に設置された浴室を使う。
そこまでして切り詰めても、現在、アパートの家賃は3カ月滞納しており、立ち退きを迫られている状態である。
「ガスはしょっちゅう止められます。水道は最後まで止められないんですが、
以前、止められたときは、警察が(安否確認のために)自宅までやってきました」
なぜこのような状況になったのか?

ちょうどこの頃、小泉政権によって製造業派遣が解禁。
身ひとつで夜行バスに乗り、東京・新宿に着いたサトシさんは程なく工場派遣の仕事に就いた。
派遣労働の規制緩和については、不安定雇用を増やすだけだとの批判もあったが、
彼は、このときが人生でいちばん楽しかったという。
「収入は(手取りで)15万円ほどでしたが、安定していましたから、仕事仲間と飲みに行く余裕もありました。
3年後には正社員になれるという話もあったので、“そのときまでみんなで頑張ろう”と励まし合ったりして。
フィリピン人や日系ブラジル人の同僚が
“帰国したら商売を始めるんだ”
“家族のために家を建てる”と夢を語るのを聞くのも好きでした」