「陽炎お姉ちゃん、初めてなんやって?リキむと痛いで」
ベッドの上で浦風の言葉を思い出す。下品な笑みが苛立たしかった。
アイツが"お姉ちゃん"なんて言うときは、羊羹を横取りしたい時か、
人を小馬鹿にする時だけって相場が決まっている。

とはいえいざ実戦となると、経験者のお言葉は、
私の毛むくじゃらだと思っていた心臓でも少しばかり打ち鳴らす
効果があったようだ。

力を抜いてーー優しく語りかけてくる男の言葉に、
どうせ初めての相手だったらもう少し若いイケメンが良かったな、なんて。
そんなことを想っているうちに、やや強引に、しかし手慣れた
所作で身体を貫かれる感触。

「15分くらいで終わるで天井のシミでも数えとき。
エッチな声が出たら、廊下のウチらみんなに聴こえるでね」

想像以上に強い刺激に、浦風の余計な言葉を反芻して口をしっかり閉じる。
これを15分我慢するのか。
痛みを感じる人もいると聞いていたものの
むしろ肛門に抜き差しされる大腸カメラに、少し良からぬ好感を
覚えて、陽炎は肩を震わせた。