先端技術が次々と韓国に吸い取られていく…。
サムスン電子やLGディスプレーが最近、日本の中小企業にしきりに接触している。

狙いは、日本が優位にある最先端の基盤技術だ。
日本の家電メーカーの凋落で売り先を失った中小企業は差し出された手をつかむしかない。

技術流出は止まらないのか。
最前線の動きを追った。

■韓国企業が熱烈提案

「相手について詳しいことは話せない」――。
光学機器の開発を手掛けるベンチャー企業、オプトデザイン(東京都八王子市)社長の佐藤栄一の口は堅かった。
技術の提供相手が韓国メーカーと認めたが、それ以上のことは一切話そうとはしなかった。
オプトデザインは薄型テレビに使う特殊なバックライトの技術を持つ。
同社と手を組む韓国メーカーはこの技術を使い、1〜2年後には液晶バックライトに使う発光ダイオード(LED)照明の数を大幅に減らし、
生産コスト、電力消費ともに改善した画期的な製品を発売する可能性があるという。

きっかけは1年ほど前のことだ。ある技術展示会で韓国メーカーの社員に声をかけられた。
「液晶テレビのバックライトに使えるんじゃないですか」。
オプトデザインは独自開発した反射板を出品していたが、用途は照明器具や案内板などを想定していた。
日本のテレビメーカーが見向きもしなかった技術を韓国メーカーが見出し、声をかけたのだ。
薄型テレビの開発競争で韓国を利することになるが、
「韓国メーカーは技術が優れていれば、相手が大企業だろうが中小企業だろうが関係なく買ってくれる」(佐藤)。
順調にいけばライセンス供与の契約を結ぶつもりだ。

2012年7〜9月期の連結営業利益が8兆1200億ウォン(約5900億円)と四半期ベースで過去最高を更新したサムスン電子に対し、
大幅赤字に沈むパナソニック、シャープ。
リストラ優先の日本の電機は足下の中小企業の技術にまで目配りして、製品力を磨きあげる余裕を失っている。
韓国企業はその隙を突く。