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「本当はシャープと最後まで一緒にやりたい気持ちはあるのだが…」。
半導体加工技術のフィルテック(東京・文京)社長の古村雄二は複雑な表情で語り始めた。
富士通の半導体技術者だった古村は2001年にフィルテックを設立。
数年前から大気中でガラス基板にシリコンなどの薄膜をつくる新しい半導体製造技術の開発に専念してきた。
真空装置が不要になるので装置価格が10分の1にまで下がるという。
薄膜太陽電池や液晶パネル向け装置としての成長性もあり、いち早く目をつけたのはシャープだった。
「古村さん、開発できたら画期的だよ。その時はシャープとぜひ独占契約してほしい」
こんな言葉を励みにして、古村は実用化を急いできた。
ところが、8月下旬、韓国から国際電話が入る。

「実用化まであとどれぐらいですか?」
液晶パネル世界首位のLGディスプレーからだった。
電話の相手は日本企業からスカウトされた技術者のようだったという。
有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)向け製造装置の技術情報を収集している過程で、フィルテックを探り当てたようだ。

「もっと大きいサンプル基板を送ってくれないか」
「その技術を採用した製造装置を日本で作ってみてくれないか」
サムスンなど韓国勢は薄型テレビで日本勢を引き離しにかかる
そこからLGの動きは早かった。
一方、液晶テレビ事業の失敗で会社存亡の瀬戸際に立たされるシャープからの反応は鈍い。
「我々も生き残っていかないといけないから…」。
古村はLGへの技術供与に傾いている。