石原莞爾 最終戦争論 講演( 昭和15年)

講演後の質疑応答

第九問 攻撃兵器が飛躍的に進歩しても、それに応じて防禦兵器もまた進歩するから、
徹底した決戦戦争の出現は望み難いのではないか。

答 武器が攻防いずれに有利であるかが、戦争の性質が持久・決戦いずれになるかを決定する有力な原因である。
(中略)
しかるに飛行機となると、戦車が地上兵器としては極めて決戦的であるのに対しても、全く比較を絶する決戦的兵器である。
地上の戦闘では土地が築城に利用され、場所によってはそのまま強い障害ともなり、防禦に偉大な力となる。
水上では土地の如き利用物がなく、防禦戦闘は至難であり、防ぐ唯一の手段は攻めることである。
更に空中戦に於ては、防禦は全く成立しない。
しかるに空中からの陸上や海上に対する攻撃の威力は極めて大きいのに対し、防空は至難である。
対空射撃その他の防空戦闘の方法は進歩しても、成層圏にも行動し速度のますます大となる飛行機に対しては、
小さな目標はとにかく、大都市の如き大目標防衛のための地上よりする防禦戦闘は、制空権を失えば、
ほとんど不可能に近い。空軍のこの威力に対し、あらゆるものを地下に埋没しようとしても実行は至難であり、
仮に可能としても、各種の能力を甚だしく低下させることは、まぬかれ難い。

空軍に対する国土の防衛は、ますます困難となるであろう。成層圏を自由自在に駆ける驚異的航空機、
それに搭載して敵国の中枢部を破壊する革命的兵器は、あらゆる防禦手段を無効にして、
決戦戦争の徹底を来たし、最終戦争を可能ならしめる。


-----
当時の人々は意味不明だっただろう