滞日27年、詩人アーサー・ビナード氏の「直感」
「日本語は消滅に向かっている」

先日、トランプ米大統領が来日した。
日本人以上に日本語と格闘してきた米国詩人、アーサー・ビナードさん(50)は何を感じたのか。
滞日27年の経験から、今はっきりこう言える。

「日本人は間違いなく変わってきた。僕の目から見れば悪い方へ」。

大好きな宮沢賢治の詩など美しい日本語がいつまでも残ってほしいと願うビナードさんにとって一番の気がかりは日本語の衰退だ。
「言語の延命には二つの条件がある。
民族のアイデンティティー、平たく言えば自国に根づく心と、その言語による経済活動です。
でも日本ではいずれも弱まっており、日本語は消滅に向かっている」とみる。

経済が日本語をどう衰えさせるのか。
「来日以来、経済を語る言葉が劇的に英語、カタカナばかりになった。
『先物』くらいは残っているけど」

デリバティブといった用語だけでなく、日常会話でアウトソーシングやインバウンド、デフォルトといった言葉を当たり前のように私たちは使う。
経済だからいいかと思っているが、
「米国の先住民の言葉が絶滅に向かったのは、貨幣から時間の表記、契約まで何もかも英語を強いられたから。
中身や衝撃度がわかっていないのにTPP(環太平洋パートナーシップ協定)という言葉だけが独り歩きし、
わかった気分になっているうちに、チチンプイプイとだまされる」。
日本語が追いやられるだけでなく、人が自分の言葉で考えなくなるという危惧だ。

でも日本と植民地の先住民とは違うのでは。
そう応じるとビナードさんはこう言った。
「日本は属国のままで、米国から独立しているとは思えないから」