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こうした米中の動きは見えていたのに、トヨタは指をくわえて見ていたと言える。
かつてのトヨタならば、米中の政治に目配りして「ルール作り」に参画し、自社に有利に導こうとする渉外能力が高かった。

海外経験が豊富なトヨタOBは言う。
「トヨタの首脳は海外に行くと、政策に影響を与える要人に会って、自社の味方につけることを仕事にしていた。
それが国益にもつながる、との判断だった。
最近は内向きになって、社外の人と議論すらしていないようだ」

こうした結果、各国の規制に対する影響力が落ちたことは否めない。
「トヨタが先頭になって動いてくれてこそ、日本勢は一致団結できる」とホンダ関係者。
だが、今のトヨタは内向きになってしまい、日本企業を引っ張るリーダーシップも欠如しているようだ。

実はEVが必ずしもエコとは言えない。
「Well to Wheel(油田から車輪まで)」といったエネルギーを作るプロセスも含めて考える必要があるためだ。
今のエネルギー政策を前提にEVとHVの二酸化炭素の排出量を比べれば、中国では40年までHVのほうが少ないとの試算もある。
中国は石炭火力発電が中心。
EVがその電力を使えば、トータルでは二酸化炭素の排出量は減らない。

かつてのトヨタならば、豊富な資金力を背景にこうしたカウンターシナリオ(対抗策)を世界に提示して歩いたのではないか。
豊田章男社長は「現場主義」を掲げるが、工場や販売だけではなく、グローバル企業が世界の規制当局に働きかける仕事にも立派な「現場」がある。