眼内レンズという器具がある
病気や怪我などにより、目の水晶体の機能を損なった患者に対し、眼球内に直接レンズを埋め込み、視力の回復を図るのだ
この治療法の考案の影には、戦争があった

1940年、英空軍第601飛行隊長ゴードン・クリーヴァー少佐は、被弾により砕けたキャノピーの破片を目に受け、両眼失明の傷を負う
その後、彼を診察した眼科医のハロルド・リドリーは、眼球内に食い込んだままの破片が、炎症などを引き起こしていないことに気付き、
キャノピーと同じアクリル素材のレンズなら、水晶体の代わりに眼球内に埋め込めるのでは?と考えたのである
(損傷した水晶体を除去するだけの手術は、古代から知られていたが、全盲よりましとはいえ、酷い遠視になる)
戦後、リドリー医師の考えは正しかった事が確かめられ、多くの視覚障害者が、視力を取り戻した
眼内レンズ開発のきっかけになったクリーヴァー退役少佐も、1980年代に、眼内レンズ埋め込み手術を受け、視力を取り戻している