ドナルド・トランプ米大統領が北朝鮮の最高指導者、金正恩・朝鮮労働党委員長との会談を約束するという、
全く予想外の展開は日本政府に大きな衝撃を与えたと言っても過言ではないだろう。

北朝鮮に政治、経済面で圧力を絶え間なくかけ続けるという、慎重に計画された米日協調下の作戦は、
米国の一方的で新しい穏健政策に取って代わった。米国の政策が長続きしない可能性もあるが。

米国の政策転換は、トランプ氏の自信に満ちた楽観に基づいている。
トランプ氏は、交渉を通じて北朝鮮に、核兵器および高度ミサイル技術の開発を放棄させようという腹積もりだ。

しかし、予想外の会談はおそらくニクソン訪中並みの衝撃を日本に与えるだろう。
当時のリチャード・ニクソン米大統領は1971年7月、中国を訪問し、毛沢東主席と会うといきなり発表した。

当時の日本政府は、それまで20年近くにわたり回避しようと苦心してきた「悪夢」を経験した。
歴代の米政権に促されるまま日本政府が忠実に守ってきた、冷戦時代の中国に対する「封じ込め」政策は、
あっという間、わずか20分の事前連絡で、一方的に放棄されたのだ。

力で勝る同盟国に裏切られ、置いてきぼりにされた日本には、米国への不信感が澱(おり)のように残り、
そのせいで米日関係は何年にもわたりぎくしゃくとした。