「シンガポールについて考えても、非難をうけるのは海岸砲兵の宿命であるように思われる。
シンガポール要塞は、海からの攻撃にたいし海軍基地を防御するため、惜しみなく費用をつかって建設されたものである。
ところが日本軍は陸から攻撃したので、海岸砲兵を非難することはできない。
戦史では、海岸砲が使用できなかったこと、海面に向ける以外どこにもむけれなかったことなどの事実について論議しているが、それは全く誤りである。
陸上にたいする射界をえるため陣地の一部をこわしさえすれば、海岸砲は島内に向けることができ、日本軍の突撃を阻止するようつとめ、その弾薬を撃ち尽くせたはずであった。
香港の海岸砲兵も同じように非難された。
この場合は事実、丘に邪魔される射界以外はどこへでも日本軍にたいし、あるだけの弾丸を射撃した。
筆者が知っている一つの例は、ある砲兵中隊長は敵が見えるところまで丘を駆け上り、それから電話室にかけこみ、公衆電話で中隊を呼び出し効果的な射撃を行った。
海岸砲の唯一の欠点は、性能が良過ぎるということである。
敵はその威力をおそれて、海岸砲の射撃に身をさらさないような要領で攻撃する手段を選ぶのである。 」