トランプ大統領は昨年4月、化学兵器が子供たちに与える破壊的なインパクトを目の
当たりにしてアサド政権の化学兵器関連施設への限定的な軍事介入を決意しました。
トランプ大統領の動機や言っていることがすべてオバマ前大統領の真逆を行くことで
あったとしても、行動が結果的に正しければそれに越したことはありません。

化学兵器禁止機関(OPCW)も12日、神経剤はロシアが開発したというイギリス政府の調査結果を
確認しました。これを受けて河野太郎外相は13日報道陣にこう話しています。
「化学兵器が使われたことなのだろうと思います。化学兵器が使用された場合には、使用した者が厳重に
処罰されねばならないと考えております。誰がその物質を使ったかというところまでは至っておりません
ので、早急な事実関係の解明を望みたいと思います」
西側諸国は、最後の最後までプーチン大統領をかばうような日本の対応を絶対に忘れな
いでしょう。お粗末と言うか、呆れ果てると言うか、安倍晋三首相も国家安全保障局も
外務省も「プーチン張り」はもう見直した方が良いと思います。

オバマ時代の2013年8月にもダマスカス近郊12カ所でサリンなどを混合した化学兵器が使用され、
1429人以上の犠牲者が出たことがあります。
オバマ大統領はシリアのバッシャール・アサド大統領に対し、化学兵器使用をレッドライン(越えて
はならない一線)と明言していました。誰もがアメリカは攻撃に踏み切ると見ていました。
しかしアメリカの盟友であるイギリスの下院が7時間の審議の末、シリアへの軍事介入を否決。
オバマも土壇場で前代未聞のUターンをし、「米国は世界の警察官ではない」と宣言しました。
この時、プーチン大統領が提案したシリアの化学兵器を国際管理するという計画に飛びつき、
シリアに化学兵器を廃棄させる枠組みで合意しました。
オバマ大統領の弱腰を見て取ったプーチン大統領はウクライナのクリミア併合を強行、ウクライナ東部
の親ロシア派武装勢力を支援して紛争を泥沼化させた上、アサド政権を支えるためシリアに軍事介入
しました。
アサド政権の化学兵器使用に対してオバマ大統領が手をこまねいたことが世界の平和と安全を大きく
損なったという面は否定できません。

木村正人 在英国際ジャーナリスト
在ロンドン国際ジャ