危害半径についても考えて見ます。
 「桜と錨」氏のサイト情報では三式弾の弾子の密度は以下となっています。
46cm 距離400m 密度0.156/平方m
40cm 同400m 同0.111
36cm 同400m 同0.063
20cm 同200m 同0.123
12.7cm 同200m 同0.037
 三式弾も改良型になると弾子放出後に残る弾体を炸裂させて破片効果も狙うようになりますが、
弾子だけだと上記で意外に密度が低いことがわかります。
 また弾子密度はわかるものの、それぞれの存速については記載がありません。
このあたりで存速を失うのかまだ遠くまで飛ぶだけの存速を残しているのか。

 「呉海軍工廠造兵部史料集成」より14cm砲の零式通常弾は弾片危害半径250m。
上記200mの20cm砲弾弾子と比較して50m遠い距離で密度は約8倍です。
 破片組成は100g以上60個、50g以上167個、50g以下906個、計1113個。

 三式弾は弾子を前方10〜15°の範囲に放出するのに対し、
零式弾はより広範囲に弾片を飛散させるため実際の危害半径も見かけの数字よりかなり広い筈です。
 とはいえ、零式弾の250mという危害半径は対人危害半径ですから対航空機の場合は数分の1乃至10分の1程度に密度が低下する筈。

 こうして見ると三式弾の着火能力を疑わない場合でも、
凝った造りの三式弾を待つまでも無く一般的な零式弾ならより小さな砲弾で同等以上の威力範囲を持ちそうです。
 三式弾も防護り弱い可燃物に対する焼夷弾としての価値はあると思いますが、
後に弾体を炸裂させるようになるのはこういう理由があったのでしょう。