>>515
そもそも小柄なドイツ戦闘機は、惨めなほど搭載燃料が少なく、直ぐガス欠に陥ったのだ。
大概、5分ほど戦うと、引き揚げねばならなかった。これは英独空軍の戦闘詳報を調べると良い。
「敵機を撃破したと思うが……燃料が心配で引き揚げた」と言う例が、圧倒的に多いのである。
ドイツの短距離戦闘機が、長時間、現場に留まって戦い、撃墜数を稼ぐのは不可能だ。

反対に、確認や立証が難しいせいで、好意的解釈――換言すれば水増しだが、これが横行し、戦果が風船のように膨らんだ。
但し、戦果の水増し報告は、ドイツだけの問題ではない。大戦中、世界中の軍隊が、プロパガンダ(政治宣伝)を含みつつ、呆れる大戦果を発表したのだ。
国民の注視に晒されることもあって、「大敗した。惨敗。ボロ負け……もう駄目です」と公表できない辛さもあった。

こうした要素も絡んで、「負けても勝った」と発表し、発砲しなくても「敵機を撃墜した」と報告した。
後者のは辛辣で、或るドイツ軍パイロットが、無傷で帰還した後、司令部に出頭して敵機撃墜を報じたが、整備員が次の出撃に備えて機体を点検すると、
機銃も機関砲も、1発も撃っていないことが判明した。涼しい顔で虚偽の申告した飛行士は、直ちに戦闘機を取り上げられ、地上勤務へ回された。
インチキ報告を繰り返している内に、慣れっこになり、つい油断したのだろう。水増し報告が習慣化した悪例である。これと似た例は幾らもあった。
「撃墜報告なんて好い加減な物さ……誰にも判りはしない。水増し報告で出世しない方が馬鹿だね」
出世すれば給料も上がったのである。
もう1つユニークな例を紹介したい。マルタ島の形勢が絶望的に不利だった頃だ。
戦闘機がなくなった英空軍は、無線を使った欺瞞行為を行なって、〈スピットファイア〉が活発に飛び回っているように見せかけた。
この頃、敵機撃墜を報告したドイツ軍飛行士は、大嘘吐きだったことになる。

http://www1.tcn-catv.ne.jp/maki/review/maki115.html

そんな狭っくるしいヨーロッパで爆撃機護衛すらできなかったナチ空軍の悪口は止めろ