零式艦上戦闘機は評価が大きく分かれる戦闘機だ。世界最高だったと意見もあれば凡作だという意見もある。
 特徴としては小回りが利き航続距離が極端に長い事があげられる。その反面、機体が弱く防弾は殆ど施していない。
優速だという意見もあるが、せいぜい500キロ中盤程度しか出ない。イギリスのスピットファイアやドイツのメッサーシュミットBf109の方が先に現れ速度も速い事を考えると速度に関しては世界最高水準とは言えない。
 果たして世界最高水準に達した時期が一瞬でも存在したかどうかは疑わしい。初期の戦いであまり強敵とは戦っていないからだ。
初陣では27機撃墜した事になっている(実際にはそれよりずっと少なかったらしい)が、その相手は複葉機など旧式機だった。
 また、数値的には大した事のないアメリカ海軍のF4Fやアメリカ陸軍のP40カーチスウォーホークにもかなり苦戦している。
敵の一流の戦闘機の中で零戦が圧倒したのは初期の頃のP38ライトニングくらいだ。
 イギリスを代表する名機スピットファイアとの対戦においてオーストラリアで数倍の敵を圧倒する戦果をあげた例がある。
しかし、その時のスピットファイアは型が古く保守や運用がどうもうまくいっていなかったようだ。スピットファイアは速度で零戦を凌駕しているだけでなく零戦が得意とする旋回性についても水平方向であれば負けていない。
スピットファイアとまともにやりあったら恐らく勝てなかっただろう。
 世界最高とまでは言えないにせよ一時的には世界的にかなり高い水準にあった事は確かだ
重量を極力減らすための細かい穴を開けるなど徹底した軽量化、機体を全金属化し一部を超々ジュラルミンを採用するなど贅沢な仕様、旋回性を高めるために翼の先端を丸くするなどの工作などの成果によるものだ。
 名機かどうかの判断は難しい。戦闘機は格闘戦オリンピックに勝つために存在するわけではない。零戦の優れている面は裏返すと寿命を短くする要因でもあったからだ。
「改造はされたが改良はされなかった」という言葉に象徴されるように一瞬でも世界最高水準に達したのは発展性や生産性が低いからだ
大戦全般を通して考えると既に説明した隼戦闘機の方が概念としては優れていたように思う。スピットファイアやメッサーシュミットBf109が常に改良を続け主力戦闘機であり続けたのとは対照的だ。