国連開発計画「人間開発報告書2005」より

死因を調べるといくつかの事実が明らかになる。
ロシアでは、食事と生活様式の影響で、心血管疾患の発生率が高い。
ロシアではこの「先進国病」のほかに感染症が増加しており、結核やHIV/エイズの脅威が増大している。
殺人や自殺も、アルコールの過剰摂取と密接に関連している。

労働市場の改革、1990年代の深刻かつ長期にわたった景気後退、そして社会保障の崩壊が人々の心理的ストレスを増やす結果となったと考えられる。
これは、アルコール消費量とアルコールが原因の病気に表れている。
同時に、法、秩序および治安を扱う国の制度が崩壊したことに伴い、暴力的な犯罪が増加している。
インフォーマルな経済活動や、暴力にものを言わせた取り立ても、平均寿命低下の原因となっている。
1990年代前半だけで男性の殺人被害者は2倍に増えた。

暴力犯罪や心理ストレスだけでなく、予防可能な感染症(とくに結核、急性腸炎、ジフテリア)の蔓延は、保健医療制度に欠陥があることを示している。
公共医療支出は、1997年から98年にかけての1年ではGDPの3.5%を占めていたが、1990年から2001年の間には平均2.9%にまで減少した。
裕福な世帯の多くは新たな民間の医療サービスに頼るようになっており、
多くの貧困世帯にとっては、あらゆるところで賄賂その他の正規外の支払いを求められるために、「無料」の公的医療サービスは手の届かないものになってしまった。

ロシアの死亡率の動向は、21世紀初頭における人間開発の最も深刻な課題の1つを示している。