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ロシアの冬は長く、そして苛烈だ。
ベンゼン中尉はこの二日、満足に寝ることも出来ず、敵の砲声の前に彼の隊はイカめいて地に伏す他なかった。
41年のモスクワ戦線での敗退は、冬の装備を持たぬ多くの優秀な兵を、無慈悲に死へと追いやった。
しかしそれにも彼は、耐え抜くことが出来た。彼は既に狂っていたためだ。

総統がコタツを認めさえしたら、どれほど多くの兵士の命が救われただろうか。
零下40度の行軍では、極寒から兵士を守る術はない。
凍傷で足は腐り始め、多くの兵士が足を切り落とし、または冷凍された。
地母神カーリーめいた冬将軍の前に、我が軍は名無し三等兵であった。

1941年6月22日、バルバロッサ作戦は我がドイツ軍の侵攻により始められた。
ドイツ軍人にとって、ロシアの征服は世界から全体主義者を駆逐する、いわば解放者の役を担う十字軍めいた神聖な戦いであった。
そして偉大なるドイツ軍はいつしか十字軍を超越し、殺人マグロと殺人トビウオの集団へとクラスチェンジ。
大いなるジャガイモの魂は何処かへ消え、殺人回遊魚へと輪廻転生した。