もともと新型潜水艦のユーザーとなる豪海軍内部では、2009年から順調に運用実績を重ねている海上自衛隊の
そうりゅう級潜水艦を輸入するのが最善との見方が根強かった。建造に際していかに豪経済に波及効果があったと
しても、結果として出来上がる潜水艦がコリンズ級と同様に故障が多いものになれば、豪海軍にとっては困ったことに
なるからだ。ただ選定当時は、豪州の雇用充実を重視するターンブル氏が首相で、現地生産に日本よりも前向き姿勢を
打ち出していた仏提案が採用された。

その後、ターンブル首相は退陣。引き継いだ同じ自由党の現モリソン内閣で国防相を務めるパイン氏は「豪仏のSPA
交渉は既に決着した」として、順調ならそう遠からず正式調印できるとの判断を示している。

ただ、足元では国防省に近いシンクタンク、豪戦略政策研究所(ASPI)のウェブサイトなどで「(仏との)潜水艦計画は
総じて失敗」「我々はプランB(代替案)を検討すべきだ」といった専門家の異論が噴出。この背景には、脅威がほとんど
なかった時代はコリンズ級のような稼働率の低い潜水艦でも乗り切れたが、中国がインド洋や豪州に近い太平洋の
島嶼(しょ)国に援助攻勢をかけ、軍事進出の気配まである現在、完成してみないことには実際の性能が確認できない
仏潜水艦よりも、既に約10年にわたり運用され改良も続いているそうりゅう級の方が安心して調達・運用できる、との
豪海軍関係者の思いがある。

さらに、豪会計検査院が選定に関して疑義をはさみ、調査に乗り出す可能性が出てきたことをこのほど地元紙が伝えた。
豪州では2019年に総選挙が実施される予定で、その行方次第では仏提案の採用が覆る可能性がある。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40552100Y9A120C1I10000/