逆に、陸上から発射された魚雷で重巡洋艦が撃沈された、空前絶後の話。

1940年4月、ノルウェー侵攻作戦を開始したドイツ軍。
海上からも、その奥に首都オスロがあるオスロフィヨルドめがけ、
陸軍の上陸部隊を乗せた、海上部隊が侵入していった。

事前にドイツは情報員からの報告により、オスロフィヨルドの防御設備、配備をつかんでおり、
旧式の砲台ばかりで、艦艇の火砲で充分に掃討できると判断していたが、
情報員の報告には海岸砲の配備状況に誤りがあり、報告より多数の砲が配備されていたほか、
フィヨルド入り口やや奥に配置された9門の魚雷発射管が漏れていたのである。

魚雷発射管付近のフィヨルドの幅は600メートル、艦艇が通過可能なフィヨルド中央部まではわずかに300メートル。
魚雷が発射されれば、まず外すことのない距離ではあったが、
問題は、配備されていた魚雷、魚雷発射管が1905年にドイツから購入された旧式のもので、
かつ、一度も実戦で使われたことがないところだった。

海岸砲の射撃で傷つき、速度が出せなくなった重巡洋艦「ブルッヒャー」が、
魚雷発射管の目の前を通過したとき、必殺の魚雷が発射された・・・はずが、

9門の魚雷発射管のうち2門が故障で発射できず、
発射された7本の魚雷のうち5本が、発射直後に沈んでしまい、
「ブルッヒャー」に命中したのは2本だけだったが、それでも「ブルッヒャー」は行動不能となり右舷に傾斜、
ここぞとばかり海岸砲の浴びせた痛打の1発が弾薬庫に飛び込み「ブルッヒャー」は爆沈。