◆人工ホル文生成実験◆

先日より騒がれているスウェーデンの少女がヴィーガンだと言われている。そうした騒動を見ていて、俺はふと思ったんだ。
俺のミルク。愛しき我が子達は、彼女たちのご飯に生まれ変われるのではないか?とね。
幸いにして、俺由来天然素材100%のミルク資源は潤沢に供給されているし、しかもタンパク質を多量に含む健康飲料だ。
俺自身その恩恵に預かっている事からも、効果は実証済。そう。俺は、これだ!と確信した。

ホルスタインマークの安全エコミルク。そのプロジェクト始動を決断した後の苦労は、並大抵ではなかった。
まず消費者の少女たちの口に届けるためには、何より鮮度が欠かせない。できることなら直に飲ませてあげたいが、生憎、俺の身体もおちんぽも一つしかない。
いっそメデューサの髪のように俺のちんぽが何百何千本にもなって世界へ旅立てれば良かったのだが、出来ないものは仕方が無い。人は己に出来ることを積み重ねていくしかないんだ。
俺はやるせなさを抱えつつも、ミルクを搾り出しては一本一本ボトリングしていった。もちろん製造日時と製造責任者のシグネイチュア記録は自ら行う。これは欠かすことの出来ない生産者の責任だからだ。
協力してくれた同居人のオッサンたちも、毎朝新鮮なミルクをしごいてはボトル詰めしてくれている。彼らと俺の関係はただの同居人という枠を超えた、不思議な責任感と連帯感で満たされている。
俺はその事に微かなこそばゆさと誇らしさを覚えた。俺のブランドロゴを纏ったミルクボトルが世界に旅立っていく夢想、俺のミルクを少女達が飲み干す光景を、俺は確かに見たんだ。
だから俺は今日もミルクを生産するんだ。母のミルクを待ち望む幼子のような少女たちの為に。