>>760
民主的な原則を守る手段をもつEU
体制のせめぎ合いは今なお続いている、と。
ハンガリーはチェコやスロバキアとともに2004年、欧州連合(EU)にも加盟しました。EUには欧州のさまざまな体制が同居しているわけですね。
ハンガリーがEUに入ったのは正しい選択でした。EUは少なくない困難に直面していますが、私は今もそう考えています。EUは欧州の国々のあいだの対立や戦争に抗する力強い手段になっています。
もちろん、すべての地域をひとつの政府が統治する欧州合衆国は、誰も望んでいない。
そんな極端な中央集権をとらなくても、EUは民主的な原則を守り、協力の土台を築いていく手段をもちあわせています。「ブレグジット」は不幸な出来事です。
英国はEUのメンバーでいるコストと離れるコストの計算を表面的にしかできなかったのでしょう。

古いタイプの経済システムに戻りつつある中国
一党独裁を続ける中国は高成長をとげ、世界第二の経済大国となりました。
コルナイ教授は1985年に中国政府系シンクタンクと世界銀行に招かれ、のちにノーベル賞を受賞したジェームス・トービン氏らと中国に1カ月滞在し、趙紫陽首相を筆頭とした当時の高官らに経済を講義しました。
国営企業改革もテーマだったそうですね。
中国について言えば、ポスト毛沢東の初期はすばらしい速度で成長しました。中国の長年にわたる高成長は、市場改革によってなしとげられたものです。
しかしここ数年、その高成長は減速しています。同じ発展段階にある他の新興国の成長率と変わりません。
中国というモンスターが野心を膨張させて世界に脅威を与えています。その(力の)前提にあるのは、市場化によって牽引されてきた高成長がもたらした経済力です。
ところが現在、市場改革は後退し、中央がコントロールする古いタイプの共産体制のもとでの経済システムに逆戻りしつつある。
中国の体制では、自由な発想が生まれずイノベーションは難しいとコルナイ教授は指摘してきました。
ただ、今の中国を見ると、AIなどで世界に先んじる開発力をみせるようになっています。それは米国にも脅威を与えています。