技術進化の前に時代遅れとなりつつある、アメリカの空母中心主義

かつてアメリカ海軍は戦艦中心主義だったが、ミッドウェー海戦など太平洋戦争で航空母艦が中心的役割を果たしたことから、空母中心主義に転換した。
しかしながら、アメリカ海軍を支配している空母中心主義も、いまや新たな海軍戦略への抜本的転換が迫られているのである。

理由の一つが、航空母艦の稼働率が劇的に低下するという危機的状況に陥りつつあるということが挙げられる。
稼働率の低下の最大の原因は、海軍工廠(こうしょう)と民間造船所を含んだアメリカ国内における造艦・メンテナンス能力の不足にあるといえる。
このような海軍関係ロジスティックス能力の低下は量的なものだけではなく、質的にも深刻であるという調査結果も数多く提示され、アメリカの国防上、深刻な問題となりつつあるのだ。(北村淳)

■技術の進化についていけない空母

かつては大海原を航行する敵艦艇を発見することは至難の業だった。
ところが海上を警戒監視するための軍事衛星、水平線の先まで探知可能な超水平線レーダーシステム、それに高性能海洋哨戒機など、科学技術が飛躍的に進歩したため、
海上を航行する艦艇や船舶、とりわけ原子力空母のような巨艦が敵の監視網から姿を隠すことは100%不可能になった。

海上戦闘艦艇にとってさらに悪いことに、中国やロシアの各種対艦ミサイル(艦艇船舶を攻撃するためのミサイル)の射程距離、命中精度、スピードなど性能が、やはり飛躍的に進歩している。

特に中国軍は、中国沿岸域に接近してくるアメリカ空母を撃破することを主目的として各種対艦兵器(アメリカ軍では接近阻止/領域拒否兵器あるいはA2/AD兵器と呼んでいる)の開発に全力を投入してきた。
中国本土の地上移動式発射装置、中国軍にとって安全な空域のミサイル爆撃機、中国軍にとって安全な海域の駆逐艦やフリゲートやミサイル艇などから、
対艦弾道ミサイル、対艦巡航ミサイル、超音速対艦ミサイル、極超音速対艦グライダーなどでアメリカ軍艦を攻撃することができる。
とりわけ巨体の原子力空母は、それらA2/AD兵器にとっては、sitting duck(容易な標的)に近い、恰好の攻撃目標だ。

(抜粋、全文はソース)
https://globe.asahi.com/article/12989399