かつてアメリカ海軍は戦艦中心主義だったが、ミッドウェー海戦など太平洋戦争で航空母艦が中心的役割を果たしたことから、空母中心主義に転換した。しかしながら、アメリカ海軍を
支配している空母中心主義も、いまや新たな海軍戦略への抜本的転換が迫られているのである。
理由の一つが、航空母艦の稼働率が劇的に低下するという危機的状況に陥りつつあるということが挙げられる。稼働率の低下の最大の原因は、海軍工廠(こうしょう)と民間造船所を含んだ
アメリカ国内における造艦・メンテナンス能力の不足にあるといえる。このような海軍関係ロジスティックス
能力の低下は量的なものだけではなく、質的にも深刻であるという調査結果も数多く提示され、アメリカの国防上、深刻な問題となりつつあるのだ。(北村淳)

とはいえ、これまで永きにわたってアメリカ海軍の組織、艦隊、兵器開発、教育訓練、そして人事などが空母中心主義に立脚して動いてきたため、空母中心主義を維持しようという勢力の方
が圧倒的に優勢だ。これは、空母中心主義が戦艦中心主義と対決していた時期と全く似通った構造である
イランやイラクを想起させる仮想敵「レッドチーム」と2週間にわたって机上で戦闘を交えることになっていた。ところが、アメリカ海兵隊ポール・ヴァン・リッパー退役中将が率いたレッドチームは、対艦ミサイル連射攻撃や小型ボート
による接近攻撃などを駆使した見事な作戦を成功させ、開戦2日目までに原子力空母や強襲揚陸艦などを含む16隻のアメリカ軍艦を撃沈した。そして見積もられたアメリカ軍の戦死者は2万人に上ったのだった。