https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57873850Z00C20A4TCR000/
[FT]コロナ危機で露呈、無極化した世界

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)を巡る地政学的な勝者がどこの国かを決めるのは悪趣味というものだろう。
救いは、勝者に値する国など存在しない点だ。

最近、何か行動を起こしたり、何かを成し遂げて尊敬を勝ち得たりした大国は見当たらない。
米国からは今回の危機に対し、「ブレトンウッズ体制」や「砂漠の嵐作戦(編集注、1991年の湾岸戦争で集中的な空爆により短期間で停戦に持ち込んだ、米国が策定した多国籍軍の作戦)」のような提案はない。かくして同盟国に一致団結して対応を促す兆しもない。
たとえトランプ米大統領にそうしたいという思いがあったとしても、彼にその手腕はない。

"第2の冷戦"という発想は捨て去るべき
こう見ると、今回の感染拡大には一ついい点がある。
21世紀初頭の国際情勢の真の姿を浮き彫りにした点だ。

今の世界がもはや米国の一極集中でないのは明らかだ。
だが我々は、最近声高に語られるような二極化した世界に生きているわけでもない。
既存の大国(米国)が、あまりに機能不全に陥って指導力を発揮できずにいるとはいえ、その競合(中国)は相手に完全に取って代わるだけの実力も信頼も欠いている。
また、第3の大国も存在しなければ、諸国連合も存在しない。