超賢者トラジェリウスの優雅なるスローライフ 第一話 罠

「がああああぁぁぁぁ!畜生っ!ちっっつくしょうっ!!」
賢者トラジェリウスは激怒していた。
というのも、彼が大事に育てていた根菜が、何者かに根こそぎ掘り出されてしまっていたからである。
「あの畜生ども、今度こそ許さん!山ごと焼き払ってくれる!!
 一匹残らずっ!絶滅だ!絶滅させてやるっっ!!」
「ふわーあぁ…、あーもう。朝っぱらからウルサイわよ、トラジェリウス」
「おお、マイヤさんか。見ろこの畑を、ワシが丹精込めて育て上げたデヤコンが!
 今日こそ収穫してくれると思っていたニジーンが!き奴らに根こそぎにされたしまったのだ!」
「き奴ら?」
「決まっておろう、ワイルドボアーの連中だ」
「それで、山を焼くとか聞こえたけど?」
「うむ、さすれば今度こそ、あのヤクザな猪めらの息の根を止めることができようて」
「あのねえ、あの山を焼かれたら、私達は明日からどこから薪を持ってくればいいのさ」
「そんなもの、商会の連中に持ってこさせればよいだろう」
「あんたはそれでいいかも知れないけど、私達に薪を買うお金なんて無いんだよ!!」
年頃娘の細腕から放たれた拳にも関わらず、トラジェリウスは地面に頭を埋めることとなった。

スローライフ。