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 満月の夜

 最近外がうるさくて、なかなか寝付けない。いったい誰が騒いでいるのだろうか。
 安眠を妨害されて、ストレスが募っていく。そんな日々が続いていた。

「クソっ! また今日もうるさい!」
 仕事に疲れた体で家に帰り、夕食を食べようやく眠れる。そんな時また騒音だ。心がささくれ立っていく。
 ……しかし、ふと気づいた。なんだか昨日より、騒音が近づいていないか?

 翌日の夜、いつもの時間にまた騒音が鳴り響く。一体何だって言うんだ。
 しかも、昨日よりもっと、良く音が聞こえる。
 まさか俺の部屋に向かって、近づいてきているのだろうか。
 さらに翌日、もう疑いようのないくらいに、それは近づいていた。ずるり、ぺたりと何かが這うような音が……。
 騒音で眠れない、なんて言っている場合ではなく、腹の底から恐怖が湧き出してくる。
 なんなんだなんなんだ、一体何が起きているんだ!

 とうとう今夜は、窓のすぐ外から音が聞こえてきた。やはり、ずるり、ぺたりと。体が震える。
 カーテンが閉じられた窓の外に、何かが……居る。たった一枚のガラスの向こう側に、得体のしれない「モノ」が。
 しかも「それ」は、とうとう窓に取りついたらしい。ガタガタと、揺れだした。
 俺が一体何をしたというのだ。向こうにいるのは、なんなんだ!

つづく