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>日本陸軍は南方戦線で、新兵器 空中機雷を完成させたというフェイク情報を流します。しかしこの新兵器に関する詳細情報は出しません。というより、あるわけがありません。そして1944(昭和19)年、ビルマ(現ミャンマー)に空中機雷装備の一〇〇式司偵8機が配備されます。

 実際に使われたのは3月18日のことです。写真偵察に出た一〇〇式司偵はイギリスのスピットファイア戦闘機、2機の迎撃を受けました。低空に急降下したものの逃げきれそうにありません。

 スピットファイアの機銃の射程に入りそうな瞬間、秘密兵器 空中機雷が初めて放出されます。いきなり目の前に飛んでくる無数の黒い物体群にあわてたスピットファイアは、操縦を誤って相次いで地面に激突、これが空中機雷の初戦果となりました。

 後年、空中機雷による撃墜戦果は、陸軍の記録では6機とされています。本当に撃墜したのかは眉唾物でもありますが、偵察機も戦闘機も600km/h以上での、ギリギリの高速追跡戦であり、いきなり爆弾かもしれない物体が目の前に飛んできたらびっくりするでしょう。追跡側からは射撃しているのかどうかも分からない、豆鉄砲のような7.7mm旋回機銃よりも、威嚇効果ははるかに期待できます。思いがけない反撃で敵機がひるんだ隙に一〇〇式司偵の高速性を発揮して、一気に離脱するという雲隠れの術は可能だったと思われます。

「空中機雷」のフェイク情報効果とこの風船による雲隠れ術がいつまで見破られず通用したのか、はっきりした史料はありませんが、この術を使った機体は全機帰還を果たしています。ゴム風船で偵察機を守る……奇想天外ですが、究極にコストパフォーマンスの良い秘密兵器であったことは間違いありません。
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