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(記事の続き)

世論の理解を得やすくする意図がある。

海外に誤解も

「敵基地攻撃能力」という用語は国際社会で一般的でない。戦後、憲法9条の下で専守防衛との
整合性を厳格に問われてきた日本独特の表現といえる。そのため海外で誤解を招きかねない。

「日本は先制攻撃について検討するのか」。河野太郎防衛相は6月25日、都内の日本外国特派員協会で
開いた記者会見で外国人記者からこう質問された。河野氏は議論を進めるうえで「言葉の定義を明確にすべきだ」と語った。

河野氏はその後のBS番組で「『敵基地攻撃』を外国の記者は『preemptive strike』と言うが、
それを日本語に戻すと『先制攻撃』になってしまう」と指摘。「先制攻撃は国際法に違反する。
『preemptive strike』がそもそもテーブルの上に乗るはずがない」と主張した。

政府も先制攻撃と敵基地攻撃を明確に区別し、敵基地攻撃については専守防衛の下でも可能だとの立場を踏襲する。

1956年に当時の鳩山一郎首相が国会で「攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが
憲法の趣旨とするところだというふうには、どうしても考えられない」と答弁し、敵基地攻撃は自衛の範囲に
含まれると明言した。敵の攻撃を防ぐのに他の手段がなければ、憲法9条に反しないとの解釈が確立した。

2003年には防衛庁長官だった石破茂氏が、日本を攻撃する意思表明と準備行為があれば敵国の基地を
攻撃可能との見解を示した。国会で「(ミサイルに)燃料を注入し始めた、準備行為を始めたような場合は
(攻撃の)着手と言うのではないか」と述べた。

敵基地攻撃を巡る議論は地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の計画断念を受けて始まった。
(続く)