>>461
これはなんの薬だったのだろう…

いよいよ執筆というところまできたところで、睡魔が襲い始めたのです。
「もう駄目だ」と思いました。
実はここへ入るとき、プロデューサーのN氏が、
「眠くなったら、これを飲んでください。おまじないです」
小粒の錠剤をひと粒渡してくれたんです。
ぼくはそれを、コップに注いだ水と一緒に置きました。
「怪しけなものではないのか?」
そんな不安があって、それを呑むことに躊躇しました。しばらく睡魔と、白い錠剤とのにらめっこがつづきました。しかし原稿を書こうと思っても、ただ眠くなるだけです。ついにぼくは決心をして、その「おまじない」を飲み込んだのでした。

あーら不思議。それから数分も経たないうちに、睡魔からも解放されて、妙にうきうきとしてくるのです。もう午前三時は間近。ぼくは夢中で書き始めました。一気に書いて、ついに約束の午前八時には、原稿を持ってロビーへ下りて行ったのです。

それにしてもあの魔法の錠剤は何だったのでしょう。
一説では鬱病の薬だということでしたが??

藤川桂介 『アニメ・特撮ヒーロー誕生のとき ウルトラマン、宇宙戦艦ヤマトから六神合体ゴッドマーズまで』 ネスコ、1998年