その女は、僕のいる厨房にまっすぐ近づいてきた
「このツィ」
まっすぐにスマートフォンの画面を見せつけ、つぶやいた
「今年は、文学賞の発表は延期なの」
僕はスマートフォンの画面へ、目を合わせずスパゲッティの湯で上りに集中していてもわかるのだ
「予約は打ち切りですね。」
女は水飲みの様に頷いた。
店内では天井スピーカから時期でもないワムのケアレスウィスパーが流れていた
やれやれ。
まったく、世界で幾人の人が同じような目にあっていたのだろうか
あの時は、とても深い井戸のようなため息をついていたような気がする