昨年刊行された「アルメニア巡礼 12の華やかな迷宮」読了
作者は建築史専門家で1998年から20年かけてアルメニア系の教会建築を調査した御仁
なので昨今のアルメニアの内実わかるかもと思って読んでみた
いやーすさまじい

・調査の交渉に行ったらアルメニア政府の各所挨拶回りさせられ、てっきり許可得られたと思って調査開始。だが最後に「実は文化省ってのがあってね…」つまり縦割り政府内部で権力アピールに利用されただけだった
・アルメニアの建築史の第一人者とお近づきになってからその息子で大学教授兼翻訳家をお雇いガイドにする条件で協力をしてもらうことに。大学教授の給与は当時月額100ドル切ってた模様
・足がないんでさらに親戚頼って乗り合いバス運転手をスカウト。アルメニア中をかけまわる(名付けて走り屋)
・ガイド役の人、「こんな小さな国だし、ちょっと誰かが頑張れば劇的によくなるはず…」が口癖。なお2005年以降そんなこと言わなくなる模様
・国立大学や文化財担当にはお金は回らずに、郷土史家の親戚の国粋主義者らしき人物の団体に公金大量投入、筆者の研究データを横取りして団体の発見した成果として発表
・というか現地の建築史の専門家の次の世代がフィールドワークしないわ図面も描けない。車で2時間のところにも現地調査しにいかない。20年たってもかわらず、むしろ金のないジョージアで次世代が育ってる
・政府で働いてたガイド役の人の息子(エリート官僚)、派閥争いで中立守ったおかげで失職し海外移住。ガイド役の人もギリシャに移住し「あ。ここ天国だわ」「うちの国の人、本読まないから俺の著作や翻訳で売れたの最大500部くらいだった」とのこと
・「君らがきてくれたおかげで考えたこともないアルメニアの隅々までいけたわ。」と大学教授や運転手が感謝の言葉

学問とか国が死んでいくってこんな感じなのかなぁ
確かに人口400万が海外脱出で300万に減るとかそういう国なのだろうけどすごい